2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10346
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
望月 維人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 強相関電子系 / 軌道自由度 / 超伝導 / 水和Co酸化物 / 磁気揺らぎ / 多軌道ハバート模型 / 遷移金属酸化物 / 揺らぎ交換近似 |
Research Abstract |
水和コバルト酸化物超伝導体では、Cot2g軌道の自由度がその磁気的な性質や超伝導の性質に重要な役割を果たしているごとが分かってきた。そこで、この超伝導体における軌道自由度に由来する多型超伝導体特有の物性や現象を研究した。具体的に以下の研究を行なった。 1,格子歪みによる磁気揺らぎの増大と超伝導転移温度の増大 最近、NQRで幾つかのサンプルの核時期緩和率1/T1を測定すると、NQR共鳴周波数の大きなサンプルほど、1/T1が大きなピークを持ち、超伝導転移温度Tcが高いことが分かった。ここでNQR共鳴周波数は、Coイオンが周りの酸素イオンから感じる電場勾配が立方対称の場合は0である量であり、CoO6八面体の立方対称からの歪みの大きさにスケールしていると考えられる。この実験結果は、Co八面体のc-軸方向への三回対称のゆがみが大きくなるほど、磁気揺らぎが増大しTcが高くなっていることを示している。この起源を調べるために、Cot2g軌道の自由度を含む多軌道ハバード模型を構築し、三回対称結晶場の大きさを変えた場合の電子系の変化を調べた。その結果、三回対称結晶場により3重のt2g軌道が低エネルギーの1重alg準位と高エネルギーの2重e'g準位に分裂し、八面体歪みの増大に伴いe'gバンドが押上られ、K点近傍に小さなホールポケットを構成することが分かった。このホールポケット間の散乱により強磁性的な揺らぎが増大し、スピン三十項超伝導の相関磁性秩序が出現する。これらの結果は上述のNQRの実験結果をよく説明する。このことは、前年提唱したホールポケット間散乱による強磁性揺らぎを媒介としたスピン3重項超伝導のシナリオを強く支持する結果になっている。また、多軌道型超伝導体特有の軌道と格子のカップイングを利用した、格子歪みによるTc制御の可能性を提供する。 2,スピン軌道相互作用によるdベクトルの異方性 t2g軌道の自由度がある場合に効いてくると期待されるスピン軌道相互作用の効果を調べた。スピン軌道相互作用項を含む多軌道ハバード模型を、乱雑位相近似をSU(2)対称性が破れている場合に拡張して調べた。その結果、dベクトルが面内を向いていることが分かった。この結果は、NMR測定で面内ナイトシフトがTc以下で減少することとコンシステントになっている。このようなスピン軌道相互作用によるdベクトルの固定は、t2g軌道の自由度をもつCo酸化物超伝導体に現れる、特徴的な性質である。
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Research Products
(6 results)