2005 Fiscal Year Annual Research Report
数値シミュレーションによる銀河団ガスの熱史と銀河団銀河形成史の研究
Project/Area Number |
03J10351
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 耕司 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙論 / ミッシングバリオン / 大規模構造形成 / X線天文学 |
Research Abstract |
現在の宇宙で我々が観測的にその存在を確認できているバリオンの量は宇宙マイクロ波背景放射の観測などから分かっているバリオン全体の半分以下でしかない。この様なこれまで観測されていないバリオンは「ミッシングバリオン」と呼ばれ、現代宇宙論の重要な未解決問題の一つである。宇宙の大規模構造形成の数値流体シミュレーションによると、バリオン全体のおよそ40%は温度が10万度から1000万度の希薄なプラズマであるWarm-Hot Intergalactic Medium(WHIM)の形で存在していると予言されており、このWHIMがミッシングバリオンの候補として考えられている。 本年度の研究では、このWHIMの検出に使われる酸素の輝線・吸収線を形成する酸素イオンの電離状態を詳しく研究した。これまでの、WHIMの研究では理論・観測を問わずWHIM中のイオンは電離平衡状態にある仮定していたが、密度が極めて希薄なWHIMでは、電離平衡に達するまでの時間が宇宙年齢に匹敵する程長くなるため、電離平衡の仮定は正しくない。そこで、電離平衡の仮定を外してイオンの電離状態の時間進化を直接解くことによって、より現実的な酸素イオンの電離状態を調べた。より具体的には、宇宙の大規模構造形成の数値流体シミュレーションで得られたバリオンの熱史に沿って、水素・ヘリウムの他に酸素・鉄・窒素・炭素などの重元素の電離状態の時間進化を調べた。その結果、輝線や吸収線の強度比が電離平衡を仮定した場合と比較して大きく異なるため、電離平衡を仮定してWHIMの温度などを評価すると、実際の温度を正しく評価できなくなる可能性があることが分かった。 また、宇宙論的大規模構造形成のシミュレーションで用いられる重力相互作用のアルゴリズムを、重力多体専用計算機GRAPEを用いて高速化することに成功した。
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Research Products
(1 results)