2004 Fiscal Year Annual Research Report
数値シミュレーションによる銀河団ガスの熱史と銀河団銀河形成史の研究
Project/Area Number |
03J10351
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 耕司 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙論 / バリオン / プラズマ / シミュレーション |
Research Abstract |
WMAP衛星によるCMBの解析に代表される観測を総合すると、宇宙のエネルギーの約4%はバリオンが占めているが、Fukugita, Hogan, Peebles(1998)は少なくともその半分以上のバリオンは直接観測されていない"ダークバリオン"であり、宇宙論的なバリオン量の収支が重要な問題であることを結論した。近年の数値シミュレーションを用いた研究から、この"ダークバリオン"の大半は、温度が10万度から1000万度で、宇宙大規模構造のフィラメントや銀河団/銀河群の外縁部に存在するWarm-Hot Intergalactic Medium(WHIM)と呼ばれる銀河間物質であると考えられている。このWHIMを観測するため、東京都立大・JAXA宇宙研を中心としたグループで専用観測衛星DIOS(Diffuse Intergalactic Oxygen Surveyor)を計画している。 天の川銀河系を中心とする半径100Mpcの近傍宇宙に存在するWHIMのDIOS衛星による検出可能性を調べるため、近傍宇宙を再現する宇宙論的数値流体シミュレーションを行った。その結果、近傍宇宙に存在する銀河団や超銀河団の周縁部やそれらを繋ぐフィラメント構造に付随するWHIMをDIOS衛星で観測でき、DIOS衛星を用いたサーベイ観測では、全バリオンの20--30%が新たに検出されることが期待されることが分かった。また、XMM-Newton衛星の観測で我々の銀河系と髪の毛座銀河団の中間地点にこれまで知られていなかった高温ガスの塊が存在する可能性が、指摘されていたが、本研究のシミュレーションでもそのような高温ガスの塊の存在が再現された。XMM-Newton衛星の観測ではこの高温ガス塊が髪の毛座銀河団や天の川銀河に付随するものである可能性を排除できなかったが、DIOS衛星ではこの高温ガス塊の位置を正確に決めることができることも予言した。 また、WHIMのような密度が希薄なプラズマではイオンと電子の再結合のタイムスケールが宇宙年齢に匹敵するくらい長くなる為、WHIM中のイオンの電離度は非平衡に時間進化する可能性があるが、これまでのWHIMの研究ではこの効果は全く考慮されていない。本研究では、既存のシミュレーション結果に対して電離非平衡の効果を取り入れて、WHIMを検出する手掛かりとなる酸素やネオンの電離度の進化を調べた。その結果、温度が100万度以下のWHIMでは電離非平衡の効果が無視できないことを見いだした。
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Research Products
(2 results)