2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10352
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 亘克 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | d波超伝導体 / ハーフメタル / 準古典グリーン関数論 / スピン・トリプレット近接効果 / 磁気的近接効果 |
Research Abstract |
本年度は、超伝導性と磁性の共存・競合の基本特性の解明を目的とした。超伝導と磁性・競合の共存は、超伝導体・磁性体接合界面近傍では比較的容易に実現可能であることをこれまでの研究から明らかにしてきた。そこで本研究ではスピントロニクスという応用的観点も視野に入れ、マンガン酸化物と銅酸化物高温超伝導体を対象にハーフメタル・d波超伝導体・ハーフメタル三層構造系の基本物性を調べた。空間的に不均一な系における界面近傍の電子状態は近接効果に支配されることから、一般化されたフェルミ流体論である準古典グリーン関数論に基づき計算を行った。超伝導体を含むヘテロ構造系に対する一般的な境界条件を導出し、それを解く数値的アルゴリズムの開発も行った。数値的計算結果から、接合界面でのスピン混合及びスピン反転散乱によって、ハーフメタル側ではスピン・トリプレット超伝導近接効果、超伝導体側では磁気的近接効果が引き起こされることを明らかにした。ハーフメタルから超伝導体に染み出した磁性は超伝導体側にアンドレーフ束縛状態を形成し、長距離オーダーの交換ポテンシャルを誘起することを明らかにした。さらに超伝導体の結晶軸の方向に加えて2つのハーフメタルの磁化の相対的な方向の違いによって、誘起された磁性の空間的対称性が決定されることも明らかにした。 本研究によって得られた磁気的近接効果は、銅酸化物高温超伝導体・マンガン酸化物多層構造系の実験において観測されている長距離近接効果のメカニズムの1つとして考えられている。 本研究の成果の一部は、フロリダ(米国)で開催された"第24回低温物理国際会議"において発表された。
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Research Products
(1 results)