2003 Fiscal Year Annual Research Report
ランダム系における温度カオス・階層構造に関する理論研究
Project/Area Number |
03J10411
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 志剛 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | カオス効果 / 温度カオス / スピングラス / Migdal-Kadanoff格子 / メモリー効果 / 若返り(rejuvenation) / エイジング / ナノ磁性粒子系 |
Research Abstract |
1.Migdal-Kadanoff(MK)格子上のスピングラスの熱平衡状態は温度や磁場の変化といった様々な種類の摂動に対して不安定であり、この性質はカオス効果と呼ばれている。そして本研究では、このモデルにおいて厳密に可能な実空間繰り込みを行うことにより、この不安定性を特徴づけるカオス指数ζと呼ばれる量を様々な種類の摂動に対して解析的に計算した。そして、すべての摂動は幾つかのクラスに分類され、同じクラスに属する摂動は同じカオス指数を持つという摂動に関するuniversarityとも呼ぶべき性質をこのモデルが持っていることを明らかにした(2003年秋の日本物理学会において発表、論文投稿準備中)。 2.温度カオス(熱平衡状態の温度変化に対する不安定性)がダイナミックスに及ぼす影響を調べるため、MK格子上のスピングラスに対し、温度サイクル過程中のダイナミックスを研究した。ここで温度サイクル過程とは、系を高温から急冷後、ある転移温度以下の温度Tに時間t_1だけ保持し、次に時間t_2だけ温度を一時的にT±ΔTへ変え、その後温度をTに戻すという過程を指す。そして、実際のスピングラスでの実験と同様、負の温度摂動に対してはメモリー効果、正の温度摂動に対しては若返りと呼ばれる現象が観測されることを確かめた(「11.研究発表」第1、第2論文)。 3.通常のd次元立方格子上のスピングラスに関しては、温度カオスが本当に存在するのかどうか、今なおはっきりとしていないというのが現状であるが、レプリカ交換モンテカルロ法を用いることによって4次元立方格子上のスピングラスにおけるドメイン壁自由エネルギーの温度依存性を調べ、温度カオスの存在を強く示唆する結果が得られた(2004年春の日本物理学会において発表、論文投稿準備中)。 4.最近ナノ磁性粒子系においてある奇妙な履歴現象が観測され、この現象はスピングラス相の存在によるものであるとの主張がなされたのだが、実際には粒子のサイズ分布に伴う緩和時間の分布のみでこの現象は定性的に説明可能であることを明らかにした(「11.研究発表」第3論文)。 5.ランダム系のエイジング現象に関する解説論文を日本物理学会誌へ寄稿した(「11.研究発表」第4論文)。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] M.Sasaki, O.C.Martin: "Temperature Chaos, Rejuvenation, and Memory in Migdal-Kadanoff Spin Glasses"Physical Review Letters. 91. 097201 (2003)
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[Publications] M.Sasaki, O.C.Martin: "Effects of Temperature Chaos on Rejuvenation and Memory in Migdal-Kadanoff Spin Glasses"AIP Conference Seriesにおいて、「The 3^<rd> International Symposium on SLOW Dynamics in Complex Systems (Nov. 2003,Sendai, Japan)」の議事録. (2004年8月に掲載予定).
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[Publications] M.Sasaki, P.E.Jonsson, H.Takayama, P.Nordblad: "Comment on "Memory Effects in an Interacting Magnetic Nanoparticle System""Physical Review Letters. (掲載予定).
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[Publications] 佐々木志剛, 根本幸児: "ランダム系のエイジング現象-平衡緩和に見られる奇妙な加齢-"日本物理学会誌. 58. 580 (2003)