2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 忠孝 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 異方的超伝導 / 超音波 / 高磁場磁束状態 / FFLO状態 |
Research Abstract |
強相関電子系における興味深い現象の一つに異方的超伝導がある。そのメカニズム解明の上で、その超伝導ギャップ構造を研究することは極めて重要である。本研究は、超音波を用いて超伝導体中の音速および音波の吸収係数を測定することにより、超伝導ギャップの異方性を研究することを目的としている。 本年度はまずホウ炭化物超伝導体YNi_2B_2Cにおける超音波吸収の実験を行った。全ての弾性モードについて測定を行った結果、ab面内にポイントノードをもつ超伝導ギャップ構造を決定することに成功した。これは超音波吸収の実験から異方的な超伝導ギャップ構造を決定した初めての事例であり、研究成果をまとめた論文がPhysical Review Lettersに掲載される予定である。 また、本年度は重い電子系超伝導体CeCoIn_5について、磁場中の音速測定を行った。最近この物質において、いわゆるFFLO状態とよばれる新しい高磁場超伝導相の可能性が指摘されている。本研究では、音速測定から磁束格子の弾性特性を調べることによって、そのような高磁場超伝導相の可能性を検証することが目的となっている。実験の結果、高磁場磁束状態において磁束格子の弾性異常を観測することに成功した。この弾性異常は、空間的に変調した超伝導ギャップ構造を強く示唆するものである。本研究成果は、長年にわたりその可能性が理論的に指摘されながら、実験的に確認されていなかったFFLO状態の極めて強い証拠を与えるものである。この研究成果をまとめた論文は、現在Physical Review Lettersに投稿中である。 以上のように、今年度の研究においては、超音波を用いて測定可能な物理量である吸収係数および音速の測定から、異方的超伝導の研究分野において大きな進展を与える成果を得ることができた。
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Research Products
(1 results)