2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 忠孝 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | FFLO相 / CeCoIn5 / 音速測定 / 高磁場磁束状態 / UPd2Al3 / 超伝導ギャップ構造 / 熱伝導率測定 / 反強磁性超伝導体 |
Research Abstract |
本研究では、強相関電子系における異方的超伝導とその周辺現象の研究を、超音波測定をはじめとする様々な実験手法を駆使して研究してきた。本年度は以下に記す二つの研究実績を得ることができた。 超伝導多重相は異方的超伝導の周辺現象の中でも最も興味深い現象の一つである。いわゆるFFLO相と呼ばれる高磁場超伝導相は、そのような超伝導多重相の一種である。最近、重い電子系超伝導体CeCoIn_5において、このFFLO相が実現していることを示唆する実験事実が報告されている。そこで本研究では、CeCoIn_5におけるFFLO相の実験的確証を得るために極低温、高磁場での音速測定を行った。その結果、高磁場磁束状態において磁束格子の弾性異常を観測することに成功した。この弾性異常は、FFLO相に特徴的な空間的に変調した超伝導オーダーパラメータを強く示唆するものである。本研究成果は、長年にわたりその可能性が理論的に指摘されながら、実験的確証が得られていなかったFFLO相の極めて強い証拠を与えるものである。 重い電子系超伝導体UPd_2Al_3は、低温で反強磁性秩序と超伝導が共存する興味深い物質である。その超伝導ギャップ構造はノードをもち異方的であると考えられている。超伝導メカニズムを解明する上でその超伝導ギャップ構造を実験的に決定することは極めて重要である。本研究ではUPd_2Al_3の超伝導ギャップ構造を決定するために、磁場角度回転下の熱伝導率測定を行った。その結果、UPd_2Al_3単結晶のab面内では熱伝導率の磁場角度依存性が見えなかったのに対し、ac面内では明確な2回対称成分が観測された。この結果はUPd_2Al_3の超伝導ギャップ構造が水平ラインノードをもつことを決定付けるものであり、この物質において反強磁性秩序に付随した磁気励起子を媒介とする非常にユニークな機構の超伝導が実現していることを強く示唆するものである。
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Research Products
(3 results)