2003 Fiscal Year Annual Research Report
微小循環系における血流動態の解明:赤血球のレオロジー特性が果たす役割
Project/Area Number |
03J10450
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 康博 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 赤血球 / 微小循環系 / 実数型格子ガス法 / レオロジー / マイクロフルイディクス |
Research Abstract |
微小循環系における血流において、赤血球運動と血漿流れを互いに独立な運動として近似することはできない。なぜなら、微小循環系の血管径は100μmから1μm程度に渡り、そのどのスケールにおいても、赤血球の大きさ(約10μm)を無視することができないからである。本研究では、1)赤血球の運動と血漿の流れを直接的に扱う新しい数値計算モデルの提案を行い、2)提案したモデルによる微小循環系における血流動態の解明を進めている。 本研究の提案するモデルは、次の仮定に基づく:A)血流に及ぼす赤血球の効果として、"赤血球の存在"による排除体積効果を第1位とし、B)毛細血管内流動を詳細に扱わない限り、赤血球膜の力学的詳細を考慮しなくても良い。 この仮定に基づき、赤血球を非混和液滴とした。これにより、血液は"多数の非混和液滴が血漿に分散した系"と捉えられる。この系のダイナミクスを調べるために井上の開発したメゾスケールの新しい数値流体手法である非混和実数型格子ガス法(IMRLG)による血液モデルを構築した。実数型格子ガス法は、あらゆる流体運動をメゾスケールの粒子運動から再現するモデルであり、ナビエ・ストークスレベルでの近似を必要としない。このことは、多数の赤血球間における流体相互作用を考慮するうえで重要である。 平成15年度は、IMRLGによる血液モデルの開発と検証を行った。 I)IMRLGによる液滴1個の分散系を考え、従来の研究結果と一致することを明らかにした。これを第17回数値流体力学シンポジウムで公表した。 II)多数の赤血球が分散する系の微小血管分岐部における流れを調べた。この結果、赤血球の分岐部における分配に対し、赤血球間相互作用、赤血球と血管壁の相互作用、分岐部幾何形状が影響することを明らかにした。これを第14回バイオフロンティア講演会で公表した。 III)ジュネーブ病院大学において開催されたステント治療シンポジウムにおいて、IMRLGによる血液モデルの講演(招待)を行った。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 井上 康博, 陳 〓, 大橋 弘忠: "On the density correlation of the spontaneous fluctuation in a real-coded lattice gas"Computer Physics Communications. 153巻1号. 66-70 (2003)
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[Publications] 井上 康博, 高木 周, 松本 洋一郎: "微小血管分岐部における赤血球流れのメゾスコピックシミュレーション"第14回バイオフロンティア講演会講演論文集. No.3-19. 85-86 (2003)
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[Publications] 井上 康博, 高木 周, 松本 洋一郎: "実数型格子ガス法による微小血管内のベシクル流れ解析のための基礎シミュレーション"第17回数値流体力学シンポジウム講演論文集. (CD-ROM). F1-F4 (2003)