2004 Fiscal Year Annual Research Report
微小循環系における血流動態の解明:赤血球のレオロジー特性が果たす役割
Project/Area Number |
03J10450
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 康博 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 赤血球 / レオロジー / Malevanets-Kapral法 |
Research Abstract |
微小循環系における血流において、赤血球運動と血漿流れを互いに独立な運動として近似することはできない。なぜなら、微小循環系の血管径は100μmから1μm程度に渡り、そのどのスケールにおいても、赤血球の大きさ(約10μm)を無視することができないからである。本研究では、1)赤血球の運動と血漿の流れを直接的に扱う新しい数値計算モデルの提案を行い、2)提案したモデルによる微小循環系における血流動態の解明を進めている。 平成16年度は、前半において、下記I)-III)を行い、分散体の分岐部における分配比の挙動を調べた。後半において下記IV)を行い、分子動力学法とMalevanets-Kapral法のカップリング手法を検討している。 I)Malevanets-Kapral法を多成分流体モデルとして拡張しIMRLG法として、J.Comput.Phys.にて発表した。 II)多数個の液滴の分散した系を考え、様々な分岐角度の分岐部における液滴の分配比を調べた。低Re数では、分配比は分岐角度によらず、流量比に比例することがわかった。これをICMF2004で発表した。 III)多数個の液滴の分散した系を考え、分散体のT路分岐部における分配比をIMRLGによるシミュレーションと理論解析から調べた。分配比は上流部における液滴分布に依存することを明らかにした。これを、日本機械学会2004年度年次大会で発表した。また、シミュレーションのテクニカルな部分をまとめたものをICMMES2004で発表した。以上をまとめた研究をComput.Fluidsに投稿し、現在、審査中である。 IV)液滴による考察から、微小血管分岐部では上流における赤血球の分布が下流の分配比に大きく影響を与えると予想される。赤血球分布は、赤血球個々の運動以外にも、それらの膜間における相互作用、壁面との分子的相互作用に影響されると考えられる。そこで、マクロな赤血球膜モデルを構成する前に、まず、脂質2重膜からなるリポソームを対象にし、膜の分子的詳細を捉えながら巨視的流動を扱えるモデルの開発を行っている。本年度では、脂質2重膜からなるリポソームの自己会合シミュレーションに成功した。
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Research Products
(6 results)