2003 Fiscal Year Annual Research Report
複雑流体中における生体1分子の動的機能計測とそのマイクロフローシステムへの応用
Project/Area Number |
03J10486
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水野 大介 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | マイクロレオロジー / 単一粒子計測 / レーザートラップ / 誘電緩和 / 複素電気泳動 / 生体システム / 複雑流体 / 粘弾性 |
Research Abstract |
蛋白質やDNA等の生体分子は、生体中の構造物やその他の生体分子との結合・乖離を繰り返しながら輸送される。また、こうした周囲の媒質との相互作用のもとで生体分子はその形状、形態をダイナミックに変化させ、1分子レベルの少数で高度な機能を発揮している。このように周囲の媒質の影響を強く受けた生体分子の性質や機能発現のメカニズムを解明するためには、生体1分子の性質を計測するとともに、その周囲の複雑流体の局所的な環境(機械的、電気的特性)をも調べる必要がある。 研究代表者が開発した複素電気泳動易動度測定法を用いると、粒子サイズのミクロスケールの媒質の粘弾性および誘電緩和特性を求めることができる。ところが易動度の検出に光散乱法を用いるこの手法では、マクロな大きさの体積中に存在する多数の微小粒子の平均的な挙動が観測されてしまう。そのためミクロな内部構造を持ちつつもマクロには均一な複雑流体に関しては正しい局所物性が得られるのに対し、生体をはじめとするマクロに不均一な複雑流体では"局所物性の平均値"しか与えることができない。これは媒質中のミクロ、マクロどちらの物理現象も直接的には反映しない実態の乏しい物性量である。 そこで研究代表者は本年度、これまでに開発した手法に大幅な改良を加え、レーザートラップした単一粒子の複素電気泳動易動度を計測することを試みた。その際、レーザートラップされたプローブ粒子の精密挙動計測に関する先進的な技術情報を有するフライ大学(オランダ)のシュミット教授の協力を得ることで、媒質の粘弾性および誘電特性をナノメートルレベルの空間分解能で計測することに成功した。この成果は不均一性の高い複雑流体の局所物性を定量的に評価、解析するための第1歩である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Mizuno D, Nishino T, Kimura Y, Hayakawa R: "Dielectric response in dilute lyotropic lamellar and sponge phases of a nonionic surfactant"Physical Review E. 67巻6号. 061505 (2003)
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[Publications] 木村 康之, 水野 大介: "リオトロピックラメラ相におけるナノ粒子のダイナミクス"物性研究. 81巻2号. 208-209 (2003)
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[Publications] Y.Kimura, D.Mizuno: "Dynamics of Nano-sized Colloidal Particles in a Lyotropic Lamellar Phase"ALP conference proceedings, eds., M.Tokuyama and I Oppenheim. (in press). (2004)