2003 Fiscal Year Annual Research Report
海洋藍藻類の鉄取り込み機構、特にシデロフォアに関する研究
Project/Area Number |
03J10529
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 裕才 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 藍藻 / シデロフォア / 鉄 |
Research Abstract |
シデロフォアは鉄欠乏下において微生物が放出する低分子キレーターである。未解明である海洋性藍藻類のシデロフォアの化学性状を明らかにするために、無菌の海洋藍藻株をCulture collectionより購入した。研究対象とした株は、単細胞性藍藻Synechococcus sp.PCC7002,CCMP1183,S.elongates CCMP1630,および糸状性藍藻Oscillatoria sp.CCMP1519である。これらの藍藻細胞は、鉄を含む合成海水培地で通気培養された後、シデロフォア産生能を評価すべく鉄欠乏培地へと移された。培養ろ液内の鉄キレート活性の評価にはCAS法が用いられた。その結果、PCC7002株のろ液が顕著なキレート活性を示したため、本株を5Lの鉄欠乏培地を用いて大量培養した。得られた培養ろ液は、ろ液内の有機物を回収するために疎水性ポリマーであるXAD樹脂で処理され、吸着した有機物を含水メタノールで順次溶出させた結果、100%MeOH画分だけがCAS法に対して活性を示した。これはPCC7002株のシデロフォアは比較的に脂溶性が高いことを示している。活性画分は減圧濃縮後、逆相カラムを用いてのHPLC分析に付された。鉄キレート活性をもつピークをCAS法で追跡した結果、3つの化合物を単離することに成功した。ESI-MSで分子量を分析した結果、これらの物質の分子量は504,532,560であり、各分子量は28 mass unitずつ増加することが判明した。これは、単離されたシデロフォアが分子内に脂肪鎖を含むことを強く示唆するものであった。また、本物質の加水分解物をGC-M5分析に付したところ、クエン酸の存在が確認された。現在、NMRを用いた詳細な構造解析を行っている。
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