2005 Fiscal Year Annual Research Report
海洋藍藻類の鉄取り込み機構、特にシデロフォアに関する研究
Project/Area Number |
03J10529
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 裕才 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | シデロフォア / 藍藻類 / 鉄 |
Research Abstract |
昨年度は無菌の海洋藍藻株Synechococcus sp.PCC7002株の鉄欠乏培地から両親和性シデロフォアsynechobactin群の構造決定を行いLimnology and Oceanography誌に報告した。本年度は外洋域の現場において海洋藍藻類を含む微生物群によるシデロフォアの放出を検出するために、シデロフォアの蛍光誘導体化を行った。試料としてはdesferrioxamine B(DFOB、Sigma)を選んだ。DFOBは初め放線菌から発見されたが、近年海洋細菌陽Vibrio sp.からも鉄欠乏下での生産が報告されている。DFO群の鉄錯体はレセプター蛋白質FoxAを介して取り込まれるが、本蛋白質はDFOを生産しない他の多くの微生物でも発現が確認されているので海水中の様々な微生物をターゲットにする際のモデル化合物となりうると判断した。DFOBの末端アミノ基の蛍光誘導化を行ったが、鉄錯体状態での鉄イオンによる分子内クエンチングを回避するために蛍光基としてsulforhodamine Bを選択した。弱アルカリ下でsulforhodamine B acid chloride(Sigma)を用いて縮合反応を行ったが目的の誘導体は殆ど得られなかった。様々な溶媒を試した結果、DMFが縮合反応に適した溶媒であると判明したが、DFOBはmesylate saltでDMFへの溶解性が非常に低かったのでTFA塩に変換してから反応に供した。反応物を水から酢酸エチルで抽出し、逆相HPLCで最終精製を行った。しかしながら、^1H-NMRおよびESI-MSの結果は構造中の1つの水素が塩素に置換していることを示唆した。二次元NMRの解析の結果、sulforhodamine上の水素が塩素に置換されていることが判明した。そこで試薬の純度等を再検討しSigma社と協議した結果、試薬が初めから塩素置換されていた疑いが高いと判断した。しかし本誘導化物の濾過滅菌海水中での蛍光スペクトルは、Fe^<3+>の過剰の存在下においても蛍光の発色には影響ないことが判明した。将来的にはDFOBレセプターをもつ細菌を使って実際に細菌全体が蛍光発色するかを検討したい。
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Research Products
(1 results)