2004 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学の新しい基礎理論の開発:密度行列の直接決定法
Project/Area Number |
03J10533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中田 真秀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 縮約密度行列 / 半正定値計画法 / 内点法 |
Research Abstract |
我々の興味は、基底状態の多電子系の量子化学、量子力学におけるエネルギーや性質を求めることにある。伝統的な方法では、自然界には二体までの相互作用しかないので、二次の縮約密度行列(2-RDM)さえあればそれらを求めることが可能である。2-RDMは波動関数と違い、変数の数がいつでも四つであり、波動関数が粒子数とともに変数の数が増えていき、複雑になることとは対照的である。ただ、Pauliの排他原理に相当する、N-representability条件の完全解は知られておらず、また必要条件だけでも、その適用は難しいとされていた。我々は、よく知られているN-representability条件の一部は、数理計画の分野で近年発展してきた半正定値計画法を使い、定式化することができることを見いだした。結果は比較的結果は良好であり、CISDやCCSDとも比しうるものであることが示された。この研究では密度汎関数法と違い、経験的なパラメーターを一切含まない。本年度は、ごく最近定式化されたN-representability条件である、T1,T2条件を化学的に興味深い系に対して応用し、エネルギーや、双極子モーメントなどを求めた。そして、それらの結果が現在高精度計算で計算効率、精度や信頼性があるので最もよく使われるCCSD(T)とほとんど同じ程度の結果を与えることを示した。また、これまで知られているN-representability条件が破綻する比較簡単な系を発見した。
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