2005 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学の新しい基礎理論の開発:密度行列の直接決定法
Project/Area Number |
03J10533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中田 真秀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 半正定値計画 / 縮約密度行列 / 量子化学 / 基底状態 / N-representability |
Research Abstract |
量子物理の多体問題や、量子化学の問題における伝統的な手法では、Schroedinger方程式やそれから導かれる方程式をとき、波動関数を求め、原子分子固有の性質を計算する。多くの場合、基底状態に興味があり、今回の我々の研究の対象でもある。たいていの場合、粒子数が増えると変数の数も増え、解くべき方程式は複雑になる。本研究の二次の縮約密度行列(2-RDM)の直接決定法の研究では、波動関数の代わりに情報量は波動関数と等価な2-RDMを求める。解くべき方程式の変数の数は粒子数に依存せず、いつでも四つであるので、量子力学のより簡単な方法になりうる。ただ、2-RDMには、特殊な付加条件であるN-representability条件を考慮に入れなければならない。さもなくば、2-RDMに物理的な意味がなくなる。だが、N-representability条件の全てを導入することは今のところ現実的でない。よく知られた必要条件としては、P、QおよびG条件などがあるが、これらはすべて行列の半正定値条件である。基底状態を求めるための変分法は、数理計画の分野で近年使われるようになった半正定値計画法として定式化される。今年度は、さらによりよいN-representability条件として近年Z.Zhaoらによって再発見された、Erdahlが導出したT1,T2条件を用いた計算の系統的な応用を行った。系が大きくなっても量子化学では十分精度が高いとされるCCSD(T)と同じ程度であるか、場合によっては、特に電子相関が強いとされる系ではCCSD(T)より高精度であった。この方法では2-RDMが直接もとまるため、さまざまな期待値を計算することができる。双極子モーメント、占有数など、厳密解比較しよく一致することが確認された。
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Research Products
(2 results)