2003 Fiscal Year Annual Research Report
生体内での中性脂肪合成の調節機構の分子メカニズムの解明
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03J10558
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢作 直也 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中性脂肪 / 肥満 / 転写調節 |
Research Abstract |
近年、耐糖能異常、高脂血症高血圧症など動脈硬化性疾患の危険因子が集積するインスリン抵抗性症候群という病態が認知されてきた。その背景には内臓脂肪を中心とした肥満があることが明らかになり、肥満症が生活習慣病につながる病理現象として注目されている。我々は従来より中性脂肪合成系の調節機構という側面から肥満症の発症機序の解明に取り組んできた。肥満症モデル動物においては肝臓における中性脂肪合成が亢進しているとされるが、中性脂肪合成系諸酵素の活性は主に各遺伝子のmRNA発現量により調節されており、その調節にはSterol Regulatory Element-binding Protein-1 (SREBP-1)という転写因子が深く関与している。従って肥満症の病態解明を進める上で、SREBP-1の役割やその調節機構を調べることは重要であり、本研究では過剰エネルギーの蓄積を包括的に制御していると考えられているSREBP-1の発現調節機構の解明を目指している。 SREBP-1の主たるアイソフォームであるSREBP-1c遺伝子の発現調節領域は、上流に位置するSREBP-1aのエクソン1とSREBP-1cの転写開始点との間の約10kbの間に存在するものと予想されている。我々はまずこの領域をマウスゲノムからクローニングし、塩基配列を決定した。次に下流部分約2kbの断片をルシフェラーゼベクターに組み込み、ルシフェラーゼ(レポーター蛋白)のアッセイにより、培養細胞でのプロモーター活性を各種条件下で測定した。高グルコース/高インスリン条件下では軽度のプロモーター活性の上昇が見られたものの、マウスやラットのin vivoの肝臓や脂肪組織における摂食時のSREBP-1c遺伝子発現上昇(これは数十倍レベルの誘導を受ける)に比べると非常に弱いものであった。残りの上流部分のDNAに対しても同様のルシフェラーゼベクターを作成し、プロモーター/エンハンサー活性を検討したが、同じく非常に弱いものであった。おそらくこれは、培養細胞系がin vivoの状況をシュミレートできていないためと考えられた。 そこでin vivoでのプロモーター解析が不可欠と考えるに至り、次の手段として下流部分約2kbの断片とルシフェラーゼをつないだコンストラクトによるトランスジェニックマウスの作成に着手した。現在受精卵へのインジェクションを施行している段階である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Yahagi, N., Shimano, H., et al.: "p53 activation in adipocytes of obese mice."The Journal of Biological Chemistry. 278. 25395 (2003)
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[Publications] Yahagi, N., Shimano, H., et al.: "p53 involvement in the pathogenesis of fatty liver disease."The Journal of Biological Chemistry. (In press). (2004)
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[Publications] Sekiya, M., Yahagi, N., et al.: "Polyunsaturated fatty acids ameliorate hepatic steatosis in obese mice by SREBP-1 suppression."Hepatology. 38. 1529 (2003)