2003 Fiscal Year Annual Research Report
糸状性シアノバクテリアの滑走運動と光応答機構の分子生物学的研究
Project/Area Number |
03J10594
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉原 静恵 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | シアノバクテリア / 走行性 / フィトクロム |
Research Abstract |
シアノバクテリアSynechocystis sp.PCC6803は、線毛構造によって固体表面上を運動し、走光性を示す。私は、正の走光性(positive phototaxis)の調節には、Cheタンパク質などのべん毛運動調節因子や受容体に相同性を示すpixG,-H,-I,-J1,-J2,-L遺伝子群がかかわることをすでに報告した。受容体PixJ1は、植物の光受容体フィトクロムの色素結合領域に似た領域をあわせ持つことから、正の走光性の光受容体と考えられた。 本研究では、PixJ1が光受容体である可能性を確かめるために、pixJ1遺伝子産物をヒスチジンタグ融合タンパク質(His-PixJ1)としてSynechocystisで発現させ、単離し、生化学的解析をおこなった。SDS-PAGEゲル内でHis-PixJ1は蛍光を発し、その強度は亜鉛イオンによって増加した。このことは、His-PixJ1がSynechocystisの細胞内でフィトクロムと同様に開環テトラピロールを共有結合していることを示している。さらに、His-PixJ1は青色光(最大吸収435nm)と緑色光(最大吸収535nm)による光変換を示した。既知のフィトクロムは赤色光(650-700nm)/遠赤色光(700-750)の光変換を示すことが知られていることから、PixJ1は新規の色素を結合する光受容体であることを明らかにした。PixJ1が結合する色素を同定するために、Synechocystisのゲノムが持つ開環テトラピロールの合成にかかわる遺伝子を探索した結果、ビリルビン(最大吸収460nm)が色素として結合する可能性が示唆されたビリルビン合成酵素(ビリベルヂン還元酵素)は動物のヘム代謝系にかかわることが知られているが、植物やシアノバクテリアではその機能は知られていない。ビリルビンがPixJ1に結合しているかを調べるために、His-PixJ1発現株を親株として、ビリベルヂン還元酵素をコードする遺伝子を破壊した。現在、この破壊株からHis-PixJ1タンパク質を単離して吸収スペクトルの測定を試みている。
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