2003 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢菌エフェクターIpgBによる上皮細胞侵入と細胞間拡散機構の解明
Project/Area Number |
03J10601
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大屋 賢司 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 粘膜病原細菌 / 細胞侵入性細菌 / 赤痢菌 / III型分泌 / エフェクター / 細胞骨格 |
Research Abstract |
本研究では、赤痢菌の感染初期動態を明らかにする目的で、本菌の感染に中心的な役割を果たしていると推定されるipgB1およびB2遺伝子群に着目し、今年度は以下の成果を得た。 1.新規エフェクターとしてのIpgB1 1)マウス肺炎惹起モデルを用いた感染実験:野生型では100%致死量を示す赤痢菌をマウスに経鼻投与すると、IpgB1欠損株では50%の生存率を示し、IpgB1が赤痢菌の新規病原因子であることが明らかとなった。 2)IpgB1標的因子の探索:酵母two-hybrid法により標的候補分子を探索したところ、中間系フィラメント構成成分であるCytokeratin(CK)7を候補分子として得た。現在、IpgB1とCK7の相互作用をin vitroおよびin vivoで検討中である。 3)IpgB1によるラッフル誘導機構の解明:IpgB1過剰発現株を作出し、IpgB1が宿主細胞中に分泌されていることを明らかにした。またIpgB1過剰発現株では、感染時に形成されるラッフルが野生型と比較して顕著に増大しており、細胞侵入効率も10倍以上に向上した(IpgB1欠損株では野生型と比較して50%程度に低下)。以上により赤痢菌は、宿主細胞にIpgB1を注入することによってアクチン細胞骨格の再構成を誘導し細胞内に侵入することが明らかとなった。現在は、IpgB1によるラッフル誘導機序を、標的分子探索と並行して、低分子量G蛋白質であるRac1、Cdc42動態に着目し解析中である。 2.IpgB2の機能解析 IpgB2に対する抗体を作製し、IpgB2がIII型分泌機構依存的に菌体外に分泌されることを明らかにした。またIpgB1のシャペロンであるSpa15欠損株を作製してIpgB2の安定性を検討したところ、Spa15はIpgB2のIII型分泌機構による分泌にも必要なことを示唆するデータを得た。現在は、IpgB2欠損株、およびIpgB1/IpgB2欠損株を用いてIpgB2の赤痢菌感染時における表現型を探索中である。
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