2003 Fiscal Year Annual Research Report
多角的アプローチによる熱帯・亜熱帯海域の窒素循環の解明
Project/Area Number |
03J10639
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅澤 有 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | サンゴ礁 / 大型藻類 / 安定同位体比 / 熱帯・亜熱帯沿岸域 / 陸域 / 栄養塩 / 時空間変動 / 懸濁態粒子 |
Research Abstract |
本研究では、沿岸浅海域の生物相の遷移や現存量の変化を予測するための要素の一つとして、場に供給される窒素の起源・形態・量を決定している窒素循環の素過程を細かな時空間スケールで明らかにするために、その1年目として、熱帯・亜熱帯域に典型的な浅海域生態系を形成する裾礁サンゴ礁において、底生生物に対する時間平均的な陸源無機態窒素の影響域を把握するための指標として底生大型藻類のδ^<15>Nの汎用性と正確性を高めるための基礎研究を行うことを目的としてきた。 ^<15>Nで標識された硝酸や通常の硝酸を異なる濃度で添加した水槽中にて、沿岸海域において時空間的に出現頻度の高い褐藻類、Padina australis.を成長量の測定を行いながら、濃度や光に関して様々な条件下で培養を行った。その結果、少なくともこの海藻種においては、現場環境条件下でのDIN-poolの大きさが小さく、また、体内でのPINのtranslocationや光合成色素量の速やかな調節等のメカニズムのために、相対的な栄養塩供給環境の変化に伴う窒素の同位体分別は起こりにくく、体内の窒素安定同位体比の時空間変動は、一定の条件さえ考慮すれば、その海藻種の利用する窒素の起源をより鮮明に反映していることが明らかになった。 そこで、実際のサンゴ礁海域において、Padina spp.を面的に季節ごとに採取して窒素・炭素同位体分析を行い、培養実験で得られた基礎データ(体内の窒素含量が一定値以下であれば、窒素供給量過飽和による同位体分別が起こりにくいはず)を用いて、陸域からの窒素Flux量だけでなく、その濃度や流出形態、また海域での海水流動や海水交換量などに規定されながら一次生産者にとりこまれているメカニズムを明らかにした。 これらの一連の研究は、日本サンゴ礁学会(Poster賞受賞)、ASLO等にて成果発表を行い、現在、投稿論文として準備中である。
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