2003 Fiscal Year Annual Research Report
海流変動が岩礁潮間帯植食者-一年生藻類群集に及ぼす影響
Project/Area Number |
03J10642
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 正和 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海流変動 / 岩礁潮間帯 / 生物群集構造 / 一年生藻類 / 植食性巻貝 / 食物網 / 局所適応 / 気候変化 |
Research Abstract |
現在の地球温暖化の進行は、気温、水温や降水量といった生物に直接影響する物理環境要因の大規模かつ急激な変動を伴うため、生物群集や生態系全体への広汎な影響が懸念されている。大規模環境変化(エルニーニョ現象や海流系の変動など)の影響を解明するためには、環境勾配に添った複数の調査域で、局所生物群集が内包する局所生息環境への適応を考慮した調査・実験を行うことが有効な方法のひとつである。本研究は、暖流と寒流による南北の海洋環境勾配が生じている太平洋岸の複数の岩礁潮間帯において、海洋環境と局所生物群集構造の時空間変異性の関係を明らかにし、且つ局所適応を考慮した操作実験を用いて、海流勢力変動が群集構造と動態に及ぼす影響を解明することを目的としている。 調査初年度である15年度は、寒流の勢力が強い北海道東部で4海岸、寒流と暖流の境界部に当たる北海道南部太平洋側4海岸、暖流の勢力が強い北海道南部津軽海峡側及び三陸海岸で4海岸、計12海岸で潮間帯生物群集調査及び海洋環境測定を行った。その結果、一年生藻類では同じ海藻種であっても出現する時期や成熟する時期が海岸間で異なっていた。さらに各海岸における出現時や成熟時の海洋物理環境(表面海水温など)も、海岸間で大きく異なっていた。また、植食性無脊椎動物類では、同じ種であっても採食する餌海藻種組成や採食が最も盛んになる時期が海岸間で異なっていた。さらに、採食が盛んになる時期の海洋物理環境も海岸間で異なっていた。これらの結果はすなわち、1)潮間帯生物のフェノロジーが海洋環境勾配に添って異なる、2)各局所群集のフェノロジーと海洋環境の関係は海岸間で異なることを表しており、局所群集が局所環境に少なからず適応している可能性を示唆している。次年度は、局所群集の移植実験を行い、群集構造と動態に及ぼす局所適応の影響を証明する予定である。
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Research Products
(1 results)