2004 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の淡水適応における塩類細胞のイオン輸送機能の解明
Project/Area Number |
03J10659
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 扶美 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 魚類 / イオン調節 / ミトコンドリアリッチ細胞 / 腎臓 / SLC26陰イオン交換体 |
Research Abstract |
魚類の主要なイオン調節器官は鰓、腸、腎臓である。鰓には塩類細胞というミトコンドリアリッチ(MR)細胞が存在し、そのイオン輸送機能は解明されつつある。魚類の腎臓の体腎にあるネフロンでも同様のMR細胞がイオン輸送に重要な役割を果たすと考えられる。実験魚としてニジマス(Oncorhynchus mykiss)を用いた。 まず知見の乏しい腎臓のネフロンの各節の形態を光学顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて観察したところ、近位尿細管(第1節、第2節)遠位尿細管の形態的特徴が明らかになった。近位、遠位尿細管ともにそれを形成する細胞はミトコンドリアに富むMR細胞で、盛んなイオン輸送を示唆した。近位尿細管は大変発達した微絨毛を管内側にもち、特に第1節にはアピカル面近くに多くのリソゾームが観察できた。遠位尿細管は微絨毛に乏しいが、バソラテラル膜の細胞質内への陥入が著しい。さらに、これらの細尿管におけるイオン輸送機能を明らかにするため、体腎組織より陰イオンを輸送するイオン輸送蛋白であるSLC26陰イオン交換体cDNAおよび演繹アミノ酸配列を同定した。既知ヒトホモログとの比較から、この交換体はSLC26A1の可能性が最も高く、データベース、ソフトウエアによる解析より、細胞内C-、N-末端を持つ10回膜貫通型蛋白であることが示唆される。ノーザンブロット解析により、このイオン交換体は体腎のみに海水、淡水両環境にて同等に発現していることが明らかにした。さらに、in situ hybridization法を用いたところ、近位尿細管第1節の一部の細胞のみにmRNA発現が局在していた。哺乳類ではこのA1交換体はSO_4^<2->と他陰イオンとの交換体であることが知られ、魚類においても海水、淡水ではSO_4^<2->の排出、吸収をそれぞれ行うことが予測される。
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Research Products
(1 results)