2003 Fiscal Year Annual Research Report
生物の構造を模倣した強くしなやかな繊維複合材料の調製
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03J10669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 律子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | キチン-タンパク質複合体 / X線 |
Research Abstract |
イカの腱は天然のキチン-タンパク質複合体の1つであり、この解析を試みた。まずイカの腱より小角X線測定を行った。水が結晶構造にどのような影響を及ぼすかをはかるため、ドライな状態とウェットな状態で測定を行った。無処理のイカの腱の小角X線散乱図から子午線上にはっきりと約16nm、8nmに相当する2つの層線状散乱が観察された。また赤道にも4-5nm付近で散乱が得られた。これらの散乱は脱タンパクした試料からは得られないことから、タンパク質由来の情報である。また、この16nmの周期は腱中のタンパク質で最も大きな周期であった。さらに透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、無処理試料の縦断面切片でおよそ17nmの周期をもつ縞状の構造物が観察された。この結果は小角X線散乱での結果を裏付けるものであった。キチンの繊維軸の周期が1.03nmであるので腱中のタンパク質はキチンの16倍の周期を持っていると考えられる。イカの腱のタンパク質はコラーゲン様のものであると報告されているが、それほど多くの散乱がえられなかったことから、コラーゲンほど規則正しい周期を持たないことが考えられる。ドライな試料とウェットな試料とを比較すると繊維軸方向では3%、横断面方向では32.5%程度の増加が見られ、横断面方向でより水の影響を受けていることが示唆された。引っ張り試験を行ったところ、ヤング率はドライな試料では約1241MPa、ウェットな試料では約811Mpaであり、ウェットな試料の方がヤング率は高かった。
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