2004 Fiscal Year Annual Research Report
生物の構造を模倣した強くしなやかな繊維複合材料の調製
Project/Area Number |
03J10669
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 律子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | キチンタンパク質複合体 / ヤング率 / X線 / 熱膨張 / 水素結合 |
Research Abstract |
イカの腱について電子顕微鏡観察から初めてヒメバチの産卵管で確認されているような横断面方向のキチン・タンパク質複合体が確認され、その構造物はおよそ4-5nmであった。これは小角X線や中性子散乱における結果とよく一致した。また繊維自体の強度を見積もるためにカニの腱から調製したαキチンの引っ張り挙動をX線のその場観察を行い、繊維軸方向の面間隔の変化を追った。加重とともに繊維方向の面間隔は増加し、ヤング率は約57GPaと算出された。次に物性と水素結合とのかかわりを見るために逆平行鎖であるセルロースII型(セルロースII、セルローストリアセテートII)熱膨張挙動をX線により観察した。これらは同じ逆平行鎖の結晶構造であるがセルロースIIは分子間水素結合が存在し、セルローストリアセテートIIにはない。水素結合のあるセルロースIIでは熱膨張挙動に異方性があり、水素結合のないセルローストリアセテートIIでは熱膨張挙動に異方性はほとんど見られなかった。また面積の増加もセルローストリアセテートIIで大きかった。セルロースIIの熱膨張挙動はa軸方向の水素結合間の距離が短いため、結合力が大きく、熱膨張挙動の差異方性に寄与しているものと考えられる。セルローストリアセテートIIではa、b軸の熱膨張率の変化もmonoclinic angle γの増加もほぼ同じ温度で確認されるため相転移が起こっていると推測された。この相転移は100℃から始まり170℃で完了した。
|