2005 Fiscal Year Annual Research Report
生物の構造を模倣した強くしなやかな繊維複合材料の調製
Project/Area Number |
03J10669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 律子 東京大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | セルロース / キチン / X線 / 熱膨脹 |
Research Abstract |
結晶性多糖類の特性として約300度で熱分解が始まるまでは熱的に安定であることが挙げられる。今まで結晶性多糖類の熱膨張を測ってきたが、全て一次元のプロファイルから単位格子の算出をしてきた。これは十分な強度を持った二次元の繊維回折図を記録するためには、実験室レベルのX線発生装置を使用すると1-2時間必要であり、熱による変化を追うために5ポイント以上は必要な実験では現実的でなかったためである。しかし繊維回折図から多くの回折点を利用し単位格子の変化を算出することは特に変化の少ない方向(熱膨張では繊維軸方向、引張りでは横断方向)において精度が格段にあがることが期待される。また最終目的として各段階での結晶構造を決定することが出来る。そこでは強力なX線源である放射光を用い、αキチンを50℃から250℃までの間を50℃ステップで測定し、単位格子の熱膨張における変化を算出した。強度比の変化や異なる回折点などが観察されなかったため、相転移などは起こっていないことが確認された。今までの結果と同様に横断面方向では熱膨張が大きいが繊維軸方向では熱膨張は小さく、熱膨張挙動は結晶構造に深く関係していると考えられた。 結晶性多糖類の熱膨張については水素結合などの結晶構造と密接に関わっていることが明らかにされてきたが、結晶化度による熱膨張挙動の違いについてはいまだ詳細なデータがない。ここではシオグサ、グロコシスティス(以上セルロースIα)、アニーリングしたシオグサ、ホヤ、ラミー(以上セルロースIβ)についての熱膨張挙動を比較した。測定はSpring8、BL40B2において行い、繊維回折図を得た。セルロースIαは220度以上でセルロースIβへの変体が起こることが知られているが、昇温実験後のX線回折図より、シオグサ、グロコシスティスでセルロースIβのパターンは観察されなかった。またIR測定においてもIα-richであることが確認され、この実験条件ではセルロースIβへの変体がほとんど進んでいないことが示唆された。繊維軸方向ではどの試料も変化は少なく、既報と一致した。200面についてはもっとも結晶性の低いラミーで、特に180度以降で急激な膨張が観察された。
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Research Products
(2 results)