2003 Fiscal Year Annual Research Report
取消訴訟システムと行政行為概念-行政の第一次判断権とは何か-
Project/Area Number |
03J10688
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
興津 征雄 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 行政訴訟 / 取消判決 / 既判力 / 拘束力 / 反復禁止効 / 行政処分 / 行政行為 / 形成訴訟 |
Research Abstract |
本研究は,当事者間の権利義務関係ではなく行政行為の適法性が訴訟の対象となる点を,民事訴訟(確認・給付訴訟)から区別される行政訴訟(取消訴訟)の特質と見て,そこにおける行政行為(行政処分)およびそれに体現される行政の第一次判断権行使の法理論的意義および機能を解明しようとするものである。本年度は、取消判決の効力に着目し,裁判所の判断が爾後の行政庁の行動を拘束する態様を,民事訴訟法学の成果をも参照しつつ分析した。 一般に,行政処分を取り消す判決が反復禁止効-同一内容の行政処分をくり返して行うことを遮断する効果-をもつことに異論はない。もっとも,判決で違法判断を受けた理由と同一の理由にもとづく再処分が禁ぜられるのは当然としても,別の処分理由を掲げれば再処分が許されるかどうかには争いがある。わが国の通説的見解は,反復禁止効を行政事件訴訟法33条にいう判決の拘束力の作用と観念し,拘束力が判決理由中の判断にのみ生ずることのコロラリーとして別理由再処分の許容を説いているが,その一方で,例えば反復禁止効を既判力の作用と解することにより別理由再処分を制限しようとする見解などもまた有力に主張されており,理論的には混乱した状況にあった。本研究は,ドイツと日本における伝統的な行政法学説・民事訴訟法学における形成訴訟の理論・行政事件訴訟法の立法過程等を分析することにより,反復禁止効を既判力の作用と解する見解は論理的に正当であるが,そのことから直ちに別理由再処分の可否を結論づけられるものではなく,この問題は,結局,行政庁(行政手続)と裁判所(訴訟手続)との権限配分(役割分担)をどう構想するかという国家機構上の側面と,同一内容の再処分に対して何度も提訴を強いられる原告私人の権利保護という側面との均衡の上でのみ解決されうる問題であるという点を明らかにした。その成果は,後掲論文によって公にされている。
|