2003 Fiscal Year Annual Research Report
バルトークの創作活動におけるナショナリズムとモダニズムの関係の解明
Project/Area Number |
03J10714
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 峰夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 音楽学 / 音楽史 / 芸術学 / 社会史 / 地域文化 / ハンガリー / ナショナリズム研究 / バルトーク |
Research Abstract |
バルトークの創作活動におけるモダニズムとナショナリズムとの関係を考えていくのにあたり、本年度は主に二つの切り口から研究を進めた。一つは演奏論の成果を応用した研究である。二十世紀初頭のハンガリーのピアノ教育や演奏習慣について調べ、そこからこの音楽家が学生時代に受けた(ピアニストとしての)トレーニングにいかに多くの事を負っていたかを明らかにした。ピアノ演奏に関する様々な資料にあたった事に加え、八月末から九月にかけてハンガリーのブダペストで当時の文献を閲覧し、関連の資料を収集した。またブダペストに於いては、バルトークの専門家のみならず、(ピアノ演奏に関してバルトークの師匠の師匠にあたる)フランツ・リストの専門家からも助言を受けた。この研究の初期の成果を元に、成城大学で開かれた2003年の美学会全国大会の「若手フォーラム」において発表をしたが、現在それを更に発展させた論文を準備している。 今年度はもう一つの切り口として、バルトークの音楽との関わりからブダペストのカバレーの文化についても調べた。一九一〇年代のハンガリーの知識人階層がどの様な都市生活を送っていたか、どの様な音楽を享受していたかを調べる事で、そこから同時期のバルトークの活動の特色が陰画のように浮かび上がってくると考えた為である。前述のハンガリー滞在中に、これについても関連資料を多く集めた。現時点までの研究では、民族音楽の影響を重視するバルトーク達の創作活動が、シャンソンの様な他の「モダンな」音楽文化との競争関係の中に置かれていた事が明らかになりつつある(なお、このテーマに関しては、2004年7月にメルボルンで開かれる国際音楽学会において発表する事が既に決定している)。
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