2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10731
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 大地 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ロートレアモン / フランス文学 / 近代詩 / 夢 / シュールレアリスム |
Research Abstract |
19世紀フランスの詩人・ロートレアモンの作品を、文学史的文脈を含めて精密かつ総合的に検討するための準備的な作業を行った。今年度はとくに、ロートレアモンの作品創造のプロセスが、いかに「夢」をめぐる現代的な問題と照応するか、というテーマを設定し、論点を整理することにつとめた。最新の学問的成果の収集、そして19世紀に刊行された書物を参照するために、フランスにおいて2回のフィールドワークを行った。具体的には、フランス国立図書館での調査を通じて、ロートレアモン関連の書誌情報の整理、資料の収集をした。また、パリ第四大学のアンドレ・ギュイヨー教授に指導を仰ぎ、フランス近代文学史に関して、示唆に富んだ助言を受けた。それを基にした考察は次のとおりである。 文学史の系譜上、ロートレアモンの作品は19世紀の文化運動であるロマン主義文学として定位されるべきであるが、死後出版である『マルドロールの歌』が注目されたのは20世紀、シュールレアリスムによって、新たな芸術の先駆的存在、さらには、ある種の聖典とみなされるようになってからである。ロートレアモンによる作品の創造からその受容までのこの半世紀の間にフランス文学は大きく変化する。その変化を、夢と文学との関わりの変化として描き出すことができないか。この問題設定に基づき、ロマン主義においては作品の主題として描かれる対象であった夢の体験が、文学体験-「書く」体験と「読む」体験、あるいはその二つの体験を通じてのコミュニケーション-とより密接な関係をとり結ぶようになる過程を、ロートレアモンの作品中に辿ることを試みた。 以上の論考の詳細は、来年度に発行されるいくつかの雑誌に発表するべく投稿済みである。
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