2004 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニティにおける技術選択・学習と教育投資に関する分析
Project/Area Number |
03J10763
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野 裕介 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 技術採用 / 共同体 / 教育水準格差 / 教育の動学的な外部効果 / 技術伝播 / 技術水準格差 / 識字教育 / 経験による学習 |
Research Abstract |
今年度は、前年度までの研究成果が一般化され、コンパクトなかたちで概念的に整理された。その成果は、"Technology Adoption in a Community of Heterogeneous Education Level : Who are your Good Neighbors?"としてまとめられた。この枠組によれば、共同体において一部の成員の教育水準が高まることが、共同体の他のメンバーにとってどのような含意を持つのかが検討できる。分析の結果明らかになったことは、そうした外部性としては正の効果と負の効果とがあり、他の成員の教育水準が低い場合には負の外部効果が発生しやすいということである。それは、教育水準が低い人は負の外部効果を被りやすいということでもある。 分析にあたって考えているのは、共同体において教育水準が異なる人々が新技術を採用するか否かを決定している状況である。共同体においては、各人は生産に関して同じ環境に直面しており、お互いの活動を観察して技術の使い方を学習できるとする。よって、技術を使用するという経験は社会的なものだといえる。ある成員の技術採用行動は、社会的経験の変化を通じて他の成員の意思決定に影響を与える。教育水準の高い成員は、技術一般に関してその使用法をよりよく推測できるとする。すなわち、ここでの教育水準は、技術特殊的なスキルに関連するというよりは技術普遍的なスキルに関連するものと考える。一方、社会的経験は技術特殊的なスキルに関連する。このような状況においては、一部の成員の教育水準が共同体全体の技術採用のあり方に影響を与える。一部の成員の教育水準が高まることで成員間の教育格差が広がると、技術の採用行動も異質なものになる。その結果、技術の使用に関する社会的経験は、高い技術から低い技術まで薄く散ることになる。教育水準が低い人にとっては社会的経験の重要性が高いため、技術あたりの社会的経験の蓄積が減少するこうした変化は望ましくない。一方、教育水準がある程度高い人にとっては、少ないとはいえ蓄積されている高い技術への社会的経験を利用しつつ高い技術を使用できるようになるため、望ましい。
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