Research Abstract |
本研究の目的は,日常生活における気分調節のプロセスを実証的に検討し,効果的な心理教育的介入法を開発することである.本年度は,一年目の気晴らし方略を中心とした気分調節に関する研究成果をもとに,抑うつ予防に役立つ心理教育プログラムの開発を行った. まず,教材を考案するため,海外において実証的検討が蓄積されている認知行動療法に基づく介入研究や文献を概観した.また,介入で焦点化する認知・行動的要因を検討するため,気分調節プロセスに関する質問紙調査や実験を実施し,教材開発の参考にした. 以上の検討を踏まえ,大学生を対象とした心理教育プログラムを考案し,介入研究を実施した.介入では,講義やディスカッション,課題,実習を行うことにより,抑うつに関連する認知や行動,対人関係の影響と自らの対処プロセスの理解を促進し,ストレス経験時のネガティブ思考や情動に柔軟に対処するための知識やスキルを習得することを目指した.介入前後には,介入効果を検討するために,抑うつやストレス反応など複数の適応指標や介入目標に対する効力感を測定した.また,各授業の終了時に授業の理解度,効力感について測定した.得られたデータを検討した結果,介入群は統制群と比較して,介入前に比べ介入後の効力感が有意に増加していることが示され,ネガティブな思考や情動を制御する自信が促進されたことが示唆された.介入群に関しては,介入効果についてより詳細に質的,量的検討を行い,下位目標ごとの効力感の変化や介入で取り上げた個々の内容に関する評価,日常的なストレス対処プロセスに関して有益な示唆が得られた. 以上の成果は,本年度に国内外の関連学会で発表され,また次年度の学会及び学術雑誌において発表予定である.以上の成果をもとに,今回の心理教育プログラムを洗練させ,目的や対象者に応じたプログラムを作成し,効果を検討することが今後の課題である.
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