2003 Fiscal Year Annual Research Report
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03J10815
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 智子 (澁谷 智子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 異文化理解 / 家族 / 障害 / 国際情報交換 / マイノリティ |
Research Abstract |
本年度は、手話と音声日本語の間で揺れる、聞こえない親をもつ聞こえる人々(Coda=Children of Deaf Adults)の言語状況に目を向けた論文、「コーダのバイリンガリズム」を『言語』に掲載した。また、そうした人々に関するアメリカの先行研究、Mother Father Deafを日本語に翻訳し、『聞こえない親をもつ聞こえる子どもたち』(現代書館)として出版した。その出版を受けて、原著者のポール・プレストンが日本手話学会や障害学会の基調講演者として来日した際には、通訳資料の作成に関わった。日本手話学会では、自らも、「関係性の中で作られるアイデンティティ--コーダを通して考える「Deafness」と「deafness」を発表した。9月からは、成人ろう者がろう児を日本手話で教育するフリースクール「龍の子学園」で定期的に参与観察を行い、聞こえない子どもと聞こえる親、ろう者スタッフの間で見られる、二言語・二文化状況を考察している。また、その逆のケースとして、聞こえる乳幼児を育でている聞こえない母親の話も、少しずつ聞いている。 国外では、7月に第14回世界ろう者会議に出席し、日本のろう教育の現状が、国際社会でどう受けとめられているのかを学んだ。また、各国のろうの高齢者介護の問題、ろう者の通訳(たとえば日本手話からアメリカ手話への通訳)についての知見も得た。 一方で、聞こえないうことを、障害学や福祉の視点からも捉えるために、他のタイプの障害についても学んだ。具体的には、知的障害児の放課後ケアを行っている複数のNPOの活動に参加し、知的障害児をケアする指導員や親の声を知った。そして、開こえないということが、他のタイプの障害と比べて、どのような特徴を持っているのか、それが親子の関係にどう影響するのかを読み解く糸口を得た。
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Research Products
(1 results)