2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10815
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 智子 (澁谷 智子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 異文化理解 / 障害 / マイノリティ / 相互行為 |
Research Abstract |
本年度は、聞こえる人々が手話の学習を通して「ろう文化」を認識していくプロセスに注目し、フィールドワークを行なった。具体的には、週に1回ずつ、千葉県K市の手話サークルと都内の日本手話の教室に通って参与観察を続けた。7月から8月にかけては、手話学習者や手話通訳者6人に聞き取り調査を行ない、9月にはK市手話講習会講師の協力を得て、入門クラスの受講者41人にアンケートを実施した。さらに、比較のために、手話とあまり関わりのない難聴者やその家族にも聞き取りを行なった。こうして集めた資料を基に、「「障害」と「言語」の重なるところ--手話を学ぶ聴者の意識変容」という論文を執筆し、『障害学研究』創刊号に投稿した(現在、第一次審査を通過し、二回目の査読の結果待ち)。 また、聴者が無自覚に内面化している身体規範にも目を向け、その一例として、発音の不明瞭な「ろうの声」に対する聴者の反応を取り上げた。ろう者の手記やテレビドラマの分析を通して、「ろうの声」が聴者社会でスティグマ化されている状況を浮き彫りにする一方で、「ろうの声」を肯定的に捉えるコーダ(ろうの両親をもつ聴者)の語りも提示し、そうした見方が必ずしも普遍的なものではないことを指摘した。この内容は、「声の規範--「ろうの声」に対する聴者の反応から」という論文にまとめて『社会学評論』に投稿し、現在、査読結果を待っている。 翻訳では、従来のろう教育の問題点とその改善案を示した英語論文を翻訳し、「学年相応のカリキュラムへ--ろう児に内容が伝わるためのろう教育の基本原理」小嶋勇監修『ろう教育と言語権』(明石書店、2004年)として出版した。また、文化研究の観点から、香港の研究者が書いた英語論文「アジアの方程式?--日韓テレビドラマ比較」を日本語に翻訳し、毛利義孝編『日式韓流』(せりか書房、2004年)の一章とした。
|