2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10824
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 眞理子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インド / 移住 / リスク分散 / 期待賃金 / ジェンダー・バイアス / 婚姻動機 / 雇用動機 / 農村-都市移動 |
Research Abstract |
インド農村部においては、不確実性に付随するリスク補完がフォーマルには困難であるがゆえに、移住は、家計にとって、家計の人口分散そのものがリスク分散の手段となり、結果、リスク軽減機能としての役割を有し、また、移住に伴う私的な所得移転も同様に不測の経済ショック時に対する所得補填効果を持つ(Sen, Dreze,1997)。一方、従来の二部門モデルに基づく研究は、期待効用最適化に基づく期待賃金最大化による人口移動を論拠とし、高賃金の誘因に重点をおくが、都市部の労働市場へ新規参入するにあたり、不確実性のために、賃金誘因に伴う移住には、pre contractや学歴によるシグナリングが要請され、(情報に基づくジョブ・サーチに基づく移住意思決定モデル、Barnerjee,1984)低所得層は、期待賃金を最大化させるよりも、保険としての機能を移住に求め、高所得層は、期待賃金最大化が移住誘因となる。1991年センサス・データを用いた推定によれば、期待形成においてきわめて重要な変数である教育水準は移住に対し有意な変数でないため、低所得者が主体の農村-都市部への移住に際し、賃金の期待形成において重要な情報手段は、フォーマルな社会資本や情報ではなく、インフォーマルな連関や情報がより移住に重要であると思われる。また、雇用動機に基づく越境して州間移動には非常に有意な結果が得られる。すなわち、より長距離の移住については、情報/移住コストが増大するために、その捻出可能性が、より重要な雇用を目的とした移住の決定要因となる。都市部の単純労働の賃金の上昇に移出者率は正に連関することより、都市部と農村部の賃金格差は、pull-factorとして機能し、ハリス・トダロの想定するような期待賃金格差に基づく人口移動仮説を支持しうる。また、最も顕著である女性の移住については、女性の労働参加率が婚姻動機に基づく移住につき有意であり、南と北西部インドにおけるジェンダー・バイアスは、経済的要因よりもむしろ移住における重大な決定要因である。
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Research Products
(2 results)