2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10830
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒崎 将広 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 戦争法 / 国際法 |
Research Abstract |
本年度は、現代における戦争法秩序の一翼を構成する、1899年および1907年の「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」(ハーグ条約)の基礎的研究を行った。具体的には、1863年の米国一般命令第百号を研究対象とした。同命令は、ハーグ条約に影響を与えた現代戦争法の起源と高く評価されており、本研究課題である戦争犯罪処罰制度の問題を検討する上では必要不可欠の素材である。 このことから、まず、本研究課題の観点からこの米国一般命令第百号に関する今日の評価がいかなるものかについて先行研究の調査を行い、その結果、先行研究が、不正現兵に対する処罰制度はもっぱら国際法の埒外にあるがゆえに国内法違反として処理する現代の犯罪人処罰制度の始まりとして同命令の意義を評価していることが明らかとなった。 次に、こうした先行研究の評価をふまえて、米国一般命令第百号が、本当に先行研究の評価するような法制度を有していたかどうかの検討作業に移った。具体的には、同命令の起草過程の調査を行い、そのために、起草者であるFrancis Lieberの戦争法講義録、個人書簡、そして南北戦争時の米国北部連合軍の公式記録を検討しに米国ジョンズホプキンス大学(ボルチモア)、ワシントンの米国公文書館(NARA)そしてハンティントン図書館(サンマリノ)を訪問した。その結果、米国一般命令第百号の規定する不正規兵の処罰制度は、従来の先行研究が評価するような、国際法の埒外にあるがゆえに国内法違反としてとらえるものではなく、国際法違反として国内処罰するものであることがわかった。 以上の結果は、現代戦争法とは異なる法構造を米国一般命令第百号は有していたことを実証するものであり、同命令を現代戦争法秩序の起源として現代の法解釈論に位置づけるこれまでの先行研究の妥当性に異議を提示してその転換をせまる有意義な成果である。 以上。
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