2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10840
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 光 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 政治思想 / 日本思想 / 明治時代 / 功利主義 / 政治哲学 / 宗教 / 西周 |
Research Abstract |
平成15年度の研究においては、主に以下の点に焦点を合わせて考察した。すなわち、西周が、明治初期の日本において、どのような層の国民を政治の主体として捉えていたか、またいかにしてその主体を育成しようとしていたかという問題である。 重点的に研究したのは、彼の「宗教論」である。その「宗教論」を、「中人以上」、「中人以下」全てを含めた国民に対する、ある種の「知育」、各人が自らの「蒙」を「啓」くようにするための戦略として捉えて考察した。 具体的には、「教門論」「復某氏書」という二つのテクストを中心にして彼の「宗教論」を分析したが、両テクストを「宗教」の問題を論じた論文としてではなく、「宗教」をめぐる議論の場を借りた思考方法論として読解した。 また、同時代の代表的な宗教家である島地黙雷の「宗教論」との比較検討を実施し、同時代における西の「宗教論」の特徴を明らかにした。これは、晩年に島地が過ごした、盛岡市北山の願教寺に資料調査した成果である。 この問題は、西において政治共同体における公的価値の実現に関わらなくても良い存在とされていた「民」の「陶冶」という問題にも関係しており、西の「宗教論」は、彼の「功利主義」思想を補完する役割を持っていたことが分かった。 このような研究による成果を踏まえ、平成15年11月、西周の出身地である島根県津和野町で開催された西周シンポジウムにおいて、報告者4人の研究発表に対し、コメンテーターとして包括的なコメントを為した。 これらの研究成果の一部は、『日本思想史学』35号に「『宗教』の再構成-西周における啓蒙の戦略-」として発表している。
|