2003 Fiscal Year Annual Research Report
ハイデッガーと「翻訳」:30-40年代の思想とそのフランスにおける受容
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03J10851
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 達也 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ハイデッガー / ヘルダーリン / 翻訳 / 受容 / フランス:ドイツ:ギリシア / ラクー=ラバルト |
Research Abstract |
本研究の目的は、マルティン・ハイデッガー(1889-1976)の翻訳論を体系的に検討し((1))、同時に、ハイデッガー哲学のフランスにおける受容を翻訳論の観点から考察する((2))ことにある。本年度はハイデッガーとドイツ古典主義・ロマン主義期の詩人フリードリヒ・ヘルダーリン(1770-1843)との関わりに注目することで、(1)の研究を重点的に遂行し、三本の論文を発表した。 『レゾナンス』誌に発表した論文、「必要なる響き合い:マルティン・ハイデッガー『人間主義書簡』への導入」では、ハイデッガーがヘルダーリンを論じつつ構築した「転換」の理論に注目し、両者の翻訳論(ヘルダーリンは数々の翻訳を行い、独自の翻訳理論を構想したことでも知られている)を接合するための手がかりを導き出した。 『学術総合誌・環』に発表した論文、「ハイデッガー、宗教そして革命:講演「貧しさ」を読む」では、『レゾナンス』誌に発表した論文で分析した「転換」の構造をより詳細に検討するために、ハイデッガーの1945年の講演論文を集中的に読解した。この講演論文は、ハイデッガー全集にも収められておらず、現時点では一部の研究者にしか存在が知られていない稀少文献である。この文献の読解を通じて、ハイデッガーがヘルダーリンと共有した転換の理論および翻訳の理論が、近代ドイツの歴史的コンテクスト、すなわち宗教改革とフランス革命からの影響というコンテクストにいかに深く根ざしていたかが検証された。 以上の研究の成果を踏まえたうえで、ごの分野の先駆的研究者であるフィリップ・ラクー=ラバルトの著作『ハイデッガー:詩の政治』(拙訳、2003年刊)に関する考察を、『機』に発表した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 西山達也: "必要なる響き合い:マルティン・ハイデガー「人間主義書簡」への導入"Resonances(レゾナンス). 創刊号. 15-21,167-168 (2003)
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[Publications] 西山達也: "ハイデガー、宗教そして革命:講演「貧しさ」を読む"学術総合誌・季刊 環(歴史・環境・文明). 第15号. 206-221 (2003)
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[Publications] 西山達也: "「詩の政治」とは何か"月刊・機. 第140号. 6-9 (2003)