2004 Fiscal Year Annual Research Report
ハイデッガーと「翻訳」:30-40年代の思想とそのフランスにおける受容
Project/Area Number |
03J10851
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 達也 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ハイデッガー / フランス / 受容 / 翻訳 / 翻訳 / コジェーヴ / ストラスブール |
Research Abstract |
本研究の目的は、マルティン・ハイデガー(1889-1976)の翻訳論を体系的に検討し((1))、同時にハイデガー哲学のフランスにおける受容を翻訳論の観点から考察する((2))ことにある。本年度は(2)を重点的に調査し、『フランス哲学・思想研究』および『未来』に成果を発表した。 『フランス哲学・思想研究』の発表論文「『無化する無』について:アレクサンドル・コジェーヴによる否定性の構想」では、フランスのハイデガー受容に多大な影響を与えたA・コジェーヴの思想に注目し、彼によってハイデガー思想がどのようにフランスの文脈に導入されたかを検討した。フランスでのハイデガー受容が本格化するのはH・コルバンによる『形而上学とは何か』の翻訳刊行(1937)以降であるが、この翻訳とコジェーヴの関係に関しては従来詳細が明らかにされてこなかった。とりわけコルバンが編集に携わっていた雑誌『哲学研究』誌(1931-36)においてコジェーヴが発表した数々の書評記事は、国内外を問わずほとんど検討が行われていない。『フランス哲学・思想研究』の論文では、コジェーヴの記事群のなかからハイデガーを扱ったものを選び、最近刊行された草稿を参照しつつフランスの初期ハイデガー受容におけるコジェーヴの役割を検討した。 フランスにおける初期のハイデガー受容の研究を通じて、思想の脱コンテクスト化と再コンテクスト化の関係が明らかにされた。思想の受容者は、自由な書き換えを行うとともに受容された思想を新たなコンテクストにおいて規範として確立する作業を行う。『未来』の発表論文「フランスのハイデガー主義、ひとつの終焉」では、このような自由な書き換えと規範化の総体としての「フランスのハイデガー主義」をめぐり、その成果と問題点とを現在的な視点から検討した。この論文は2004年12月にストラスブールで行われたハイデガー・コロキウムの報告も兼ねている。
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Research Products
(2 results)