2003 Fiscal Year Annual Research Report
映画・歴史・記憶-ジャン=リュック・ゴダールの映像作品における記憶と歴史について
Project/Area Number |
03J10857
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 潤之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 映画 / 歴史 / 記憶 / ゴダール / モンタージュ / ヨーロッパ |
Research Abstract |
今年度は、映像作家ジャン=リュック・ゴダールと資料的・人脈的につながりのあるパリ第3大学にて、ジャック・オーモン教授の指導の下で研修を行い(2003年6月〜7月)、ゴダール作品の「映像の倫理」の映画史・思想史的な位置づけ、彼が自らの「映像の倫理」を二十世紀の歴史叙述に応用する際に浮上する「歴史の詩学」の理論的な可能性と地政学的な限界、そしてホロコーストの表象に対する彼の「記憶の政治学」の特異な様態についての研究を進めた。その成果として、主として二つの論文を発表した。第一の論文は、『映画史』の詳細な分析を通じて、(1)ゴダールが「モンタージュ」の概念を二十世紀の歴史に適用するやり方を分析し、(2)映像によるホロコーストの表象をめぐる彼の発想を明確にした上で、(3)その際に彼が立脚している二つの映像観を二十世紀の映像論および思想史の系譜に位置づけたものである。第二の論文は、『映画史』に見られるヨーロッパ中心主義を批判するが、ゴダールのヨーロッパ中心主義は、40年以上におよぶ彼の映画的・知的探求の必然的な帰結という側面を持っているため、それを単に批判するだけではなく、映画作家の1968年以後の道程に位置づけなおし、さらに作品から浮かび上がる特異なヨーロッパ像の諸特徴を指摘したものである。また、2004年1月にパリへ出張し、日本ではほとんどアクセスできない彼の映像作品(特に90年代の短編)および関連文献を可能な限り収集・閲覧・分析した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Junji Hori: "La Geo-politique de l'image dans les Histoire(s) du cinema de Jean-Luc Godard"ヨーロッパ研究. (印刷中). (2004)
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[Publications] Junji Hori: "Montage, Image, History : Godard's Two Historiographies"Michael Temple, James Williams, Michael Witt (eds), FOREVER GODARD. (in press). (2004)
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[Publications] 堀 潤之: "フランス映画批評とハリウッド"現代思想 2003年6月臨時増刊号. 256-265 (2003)