2004 Fiscal Year Annual Research Report
X線観測による、銀河団プラズマの物理状態の新しい解釈の確立
Project/Area Number |
03J10973
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 勲 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 銀河団 / X線 / プラズマ / クーリングフロー / 加熱 / 磁気乱流 / Astro-E2衛星 / 硬X線検出器 |
Research Abstract |
従来は代表的なクーリングフロー天体と思われていたAbell 1795銀河団に対し、有効面積および空間分解能で「あすか」に勝るNewton衛星のデータを解析した。銀河団プラズマの熱的状態を調べたところ、クーリングフロー現象が起きているという描像よりむしろ、高温(〜6.2keV)・低温(〜2.2keV)の二成分のプラズマが共存しているとした方がデータを良く再現できる、という結果を得た。これは、昨年度にケンタウルス銀河団で得た結論と一致するもので、普遍的な事実であると考えられる。これにより、「あすか」衛星で得られていた示唆が観測的に明確となり、従来のクーリングフロー仮説に代わる、銀河団プラズマの新しい描像を確立することができた。放射冷却を補うプラズマの加熱源としては、銀河の運動によって励起される磁気乱流のエネルギー散逸が最も有力であると考えられ、太陽コロナとの類似性を考えると全ての観測事実を矛盾無く説明することできる。9月下旬に岩手大学にて行なわれた、日本天文学会秋季年会での企画セッション「銀河団のクーリングフロー問題」ではこれらの成果を口頭で発表し、フリーディスカッションにも積極的に参加して討論を行なった。また海外でも、5月上旬のRingberg(独)での研究会"X-ray Studies of Galaxy Clusters and Deep X-ray Surveys"、および7月中旬のパリでのシンポジウム"35th COSPAR"にて発表を行なうとともに、議論を行なってきた。 一方で、打ち上げを間近に控えたAstro-E2衛星搭載の硬X線検出器(HXD)について、各種の環境試験や較正試験などに主導的な立場で参加、またそこで得られたデータの解析を行ない、銀河団からの硬X線を捉えるために最大限の性能を発揮できるよう努めてきた。これにより、上記の描像に全く別の角度からの裏付けを与えることが期待される。
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