2003 Fiscal Year Annual Research Report
インフレーション宇宙における物質の起源とその揺らぎの進化
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03J10975
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 史宜 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バリオン生成 / アフレックダイン機構 / カーバトン / インフレーション / ニュートリノ振動 / マヨロン / ビッグバン元素合成 / Qボール |
Research Abstract |
超対称性標準理論に存在する平坦方向を用いたバリオン生成機構としてアフレックダイン機構がこれまでよく調べられてきた。しかしながら、低エネルギーの有効理論の範囲ではどの平坦方向が選ばれるか決めることができない。そしてアフレックダイン機構が働かない平坦方向が多く存在している。その様な平坦方向が選ばれた場合にも自発的バリオン生成機構が働き、物質と反物質の起源を説明できることを示した。 カーバトンモデルと呼ばれる機構が密度揺らぎの起源として近年提唱された。その候補となる、モヂュライ場、D-、F-flat directions、アフレックダイン場、右巻きスカラーニュートリノ場のつくる密度揺らぎの性質について詳細に調べた。特に、WMAP衛星による宇宙背景輻射の結果と照らし合わせ、各候補について制限を与えた。また、アフレックダイン場がカーバトンである場合に、熱浴からの負のlogポテンシャルが存在するシナリオについて考察を与えた。 WMAP衛星による宇宙背景輻射から、大きなスケールでの揺らぎが小さいことが示唆されている。この様な特徴を持つ密度揺らぎを与えるインフレーションモデルとして、ハイブリッドニューダブルインフレーションモデルを提唱した。 超対称性標準理論に存在する平坦方向がインフレーションを引き起こす可能性について検証した。そして第一世代のみからなるD-flat directionを用いれば、観測結果に矛盾することなくケオティックインフレーションを引き起こす事を示した。 近年のニュートリノ振動実験の結果から、ビッグバン元素合成前にはニュートリノの非対称性はフレーバー間で平衡化される事が示されていた。しかしながら大きなニュートリノの非対称性はビッグバン元素合成と宇宙背景輻射の結果を無矛盾にするためにしばしば必要となる。そこで、ニュートリノにマヨロンとの相互作用を導入することで、ビッグバン元素合成前のニュートリノ振動を止めることができることを解析的、数値的に示した。 ビッグバン元素合成理論の予言する軽元素の存在量と実際の観測量の間には隔たりがある。また宇宙背景輻射から示唆されるバリオン数とビッグバン元素合成理論から決まるバリオン数との間にも開きがある。そこでQボールと呼ばれるノントポロジカルソリトンを用いることで、ビッグバン元素合成後にバリオンを放出するシナリオを提唱した。これによって全ての軽元素と宇宙背景輻射から示唆されるバリオン数が無矛盾となる事が示された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Chiba, Fuminobu Takahashi, M.Yamaguchi: "Baryogenesis in a flat direction with neither baryon nor lepton charge"Physical Review Letters. 92. 011301 (2004)
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[Publications] S.Kasuya, M.Kawasaki, Fuminobu Takahashi: "MSSM curvaton in the gauge-mediated SUSY breaking"Physics Letters B. 578. 259-268 (2004)
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[Publications] M.Kawasaki, Fuminobu Takahashi: "Inflation model with lower multipoles of the CMB suppressed"Physics Letters B. 570. 151-153 (2003)
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[Publications] Fuminobu Takahashi, M.Yamaguchi: "Spontaneous baryogenesis in flat directions"Physics Review D. 69(予定). (2004)
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[Publications] K.Hamaguchi, M.Kawasaki, T.Moroi, Fuminobu Takahashi: "Curvatons in supersymmetric models"Physics Review D. 69(予定). (2004)