2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J10985
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 裕之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 渦巻銀河 / 電波 / 力学 / 星間ガス / 分子ガス / おとめ座銀河団 |
Research Abstract |
私は国立野辺山電波観測所において、おとめ座銀河団銀河の分子輝線を電波で観測して分子ガスの運動を調べ、渦巻銀河の力学的構造とそれに伴うガスディスクの性質について研究している。本年、私は新たな観点・手法によって渦巻銀河の質量分布を探った。 渦巻銀河の質量分布はいわば銀河の骨格であり、力学的構造として重要な要素である。これまで渦巻銀河における質量分布は銀河の回転曲線を調べることによって調べられてきた。この方法は銀河が純円運動しているという仮定にもとづいているが、棒渦巻銀河などの中心部では非円運動が顕著となるため円運動近似が成り立たなくなる。このような銀河における質量分布を求めるため、観測された銀河の速度場からガスの2次元軌道を決定する手法を考案した。銀河面内における2次元的軌道を決定するためには、位置と速度についてそれぞれ2つの情報が必要である。観測から位置についての2成分と速度について1成分(視線速度)の情報が得られるが、視線に垂直な方向の速度成分は観測的に決定することが難しい。そこで以下のような物理的に妥当な2つの仮定をおいた。(1)銀河の質量分布は軸対称成分が卓越しており、銀河面を運動する物質の角運動量は軌道に沿って一定である。(2)ある回転系から物質の軌道を見れば、軌道は閉じている。このような仮定をおくことによって視線に垂直な速度成分を見積ることができ、銀河における2次元的軌道が決定できる。さらに決定された2次元軌道から質量分布を決定することができる。野辺山ミリ波干渉計を用いて観測したNGC 4569の^<12>CO(J=1-0)データに、この手法を適用し2次元軌道および質量分布を決定した。この銀河は中心部で顕著な非円運動を示している。この手法を適用した結果、棒渦巻銀河に特徴的な長円形に歪んだ軌道と質量分布を観測データから直接的に得ることができた。この結果は現在、論文として投稿中である。
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