2004 Fiscal Year Annual Research Report
2次元固体ヘリウム3における量子スピン液体状態の実験的検証
Project/Area Number |
03J11007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 洋介 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 超低温 / 量子液体・固体 / 量子スピン液体 / 2次元3角格子 / モット転移 / 強相関 |
Research Abstract |
グラファイト上に物理吸着したヘリウム3(^3He)原子は、低温で理想的な2次元強相関フェルミ粒子系を形成する。特に、吸着第2層目には3角格子構造を持つ低密度整合相(4/7相)が存在し、その磁気基底状態はギャップレスの量子スピン液体状態であると考えられている。また、低面密度のFermi流体相では、4/7相に向かって密度を増加させると^3He準粒子有効質量m^*が発散的に増大し、これがMott-Hubbard型の量子局在転移として理解できるという主張がなされている。前年度までの熱容量測定によって、4/7相のごく近傍の密度域ではMott局在相に零点空格子点をドープした新たな量子状態が実現している可能性が示唆された。ここではスピン自由度に由来する交換相互作用程度の温度(T【approximately equal】1mK)の熱容量ピーク(スピン熱容量)と、30mK付近のなだらかなピークとが共存する奇妙な温度依存性を持つ。系はFermi流体相からこの異常状態を経由し、連続的にMott局在相に移行すると考えられる。 今年度は前年度の実験結果を補うとともに、まず4/7相より高密度領域の熱容量測定を行った。その結果、4/7相完結以上の密度で直ちに3層目Fermi流体が形成されるわけではなく、2層目内で4/7相に粒子ドープされた状態か、もしくは3層目にself boundした液体^3Heが形成されている可能性が示唆された。 さらに、吸着第2層目の^3Heの一部を^4Heで置換した効果について調べた。その結果、低温スピン熱容量への影響は大きくないものの、30mKのなだらかなピークは大幅に増大し、過剰熱容量の密度変化は4/7相の密度を中心として対称的であることが分かった。これは単純な^3He^<-4>Heの混合では説明のできない現象であり、空格子(もしくは^3He粒子)ドープされた4/7相に対し、ボゾンである^4He不純物が何らかの影響を及ぼしていると考えられる。
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