2004 Fiscal Year Annual Research Report
モット絶縁体から高温超伝導体への絶縁体-金属転移のナノスケール電子分光
Project/Area Number |
03J11127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
幸坂 祐生 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 走査型トンネル顕微鏡 / 金属絶縁体転移 / 高圧合成 |
Research Abstract |
高温超伝導は発見されてからまもなく20年になるが、物理学における未解決の問題として多くの研究者が精力的な研究を行っている。また、高温超伝導は絶縁体相に隣接して現れ、キャリアドープによって絶縁体が超伝導を示すようになる劇的な現象としても知られている。その背景には強い電子多体相互作用があることが示唆されており、その理解には分光学的手法による電子状態の理解が欠かせない。また、高温超伝導体はドーピングのために乱れのある系であり、事実、その超伝導状態は空間的に不均一であることが知られている。このことから、高いエネルギー分解能と高い空間分解能を同時に有する測定手法による本質的に重要である。そこで本研究では、走査型トンネル顕微鏡/分光法(STM/STS)を用いた、ナノメートルスケールでの実空間電子分光を行った。 STM/STSは高い空間分解能とエネルギー分解能を併せ持つ唯一の分光的測定手段であるが、測定可能な試料に対する制約も大きい。本研究では、昨年度までに、測定に適した優れたへき開性試料として、絶縁体-金属転移近傍組成のCa_<2-x>Na_xCuO_2Cl_2単結晶の育成を行った。これにより、キャリアドーピングに伴う電子状態の発達過程を実空間で観察することが可能になった。本年度は、昨年度に引き続き、この試料を用いてSTM/STS測定を、(1)キャリアドーピングに伴う系の金属化過程は、空間的に一様なものではなく、金属的領域が増加する過程であること、(2)絶縁体と超伝導の境界付近のドープ領域において、電子結晶ともいえる特徴的な超格子構造が存在すること、を明らかにした。それぞれの結果は、(1)Physical Review Letter誌、(2)Nature誌において発表された。
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Research Products
(2 results)