2003 Fiscal Year Annual Research Report
モット絶縁体から高温超伝導体への絶縁体-金属転移のナノスケール電子分光
Project/Area Number |
03J11127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
幸坂 祐生 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 走査型トンネル顕微鏡 / 金属絶縁体転移 / 高圧合成 |
Research Abstract |
高温超伝導は反強磁性モット絶縁体にキャリアをドープして得られるため、キャリアドープに伴う電子状態の発達過程を明らかにすることが、発現機構の解明へ向けての重要な要素の一つであると考えられている。本研究においては、この発達過程を明らかにすることを目的として、走査型トンネル顕微鏡/分光法(STM/STS)を用いた、ナノメートルスケールでの実空間電子分光を行った。特に注目したのは、キャリアドープに伴って系が絶縁体から金属へと変化するまさにその過程である。 STM/STSは高い空間分解能とエネルギー分解能を併せ持つ唯一の分光的測定手段であるが、測定可能な試料に対する制約も大きい。そこでまず、本研究では測定に適した優れたへき開性試料として、絶縁体-金属転移近傍組成のCa_<2-x>Na_xCuO_2Cl_2単結晶の育成を行った。これまでに判明している単結晶育成に必要な実験的条件を精密化することで、絶縁体組成を持つ単結晶を得ることに成功した。これにより、絶縁体組成から超伝導体組成にいたる広い範囲での組成制御された単結晶を得ることができたことになる。 次に、得られた単結晶を用いてSTM/STS測定を行った。その結果、キャリアドーピングに伴う系の金属化過程は、空間的に一様なものではなく、金属的領域が増加する過程であることが判明した。対応して、角度分解光電子分光においては、運動量空間における低エネルギー状態の増加が観察されている。このような、銅酸化物高温超伝導体における絶縁体-金属転移を実空間における電子分光によって観察した例はこれまでに無く、本研究の成果初めてである。こうした実験結果は、高温超伝導の理論的研究に対しても大きなインパクトを持つものであると考える。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Y.Kohsaka: "Angle-Resolved Photoemission Spectroscopy of (Ca, Na)_2CuO_2Cl_2 Crystals : Fingerprints of a Magnetic Insulator in a Heavily Underdoped Superconductor"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 1018-1021 (2003)
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[Publications] Y.Kohsaka: "STM/STS study on Ca_<2-x>Na_xCuO_2Cl_2 single crystals"Physica C. 388-389. 283-284 (2003)
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[Publications] Y.Kohsaka: "Real Space Imaging of the Electronic States in Underdoped Ca_<2-x>Na_xCuO_2Cl_2 Single Crystals"Journal of Low Temperature Physics. 131. 299-303 (2003)