2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒谷 誠一 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イオン濃度 / 膜電位 / カルシウム / カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ / 細胞形状変化 / 発火特性 / 錐体細胞 / スパイン / 海馬 |
Research Abstract |
記憶の形成と想起で重要な働きをする海馬における錐体細胞とスパインの基礎的な生理特性を明らかにするために、理論の構築と数値解析を行った。まず神経細胞のイオン濃度と電位の時空間変化を表す理論を新たに構築した。その理論を用いて細胞内のイオン濃度と電位分布を数値的に解析した。その結果と生理実験結果が整合することから理論の妥当性が確認された。本理論は種々の特性を持つイオンチャネルに拡張可能であらゆる細胞に適用可能であるため、基盤的でありかつ極めて有益な成果である。 次に細胞内外の浸透圧差による短期的な細胞形状変化が発火特性とくに潜時に与える影響を解析した。まず、細胞形状の影響を効果的に議論するための手法として、マイクロ・コンパートメント・モデルを提案した。樹状突起に興奮性後シナプス電位が印加されたときに、発火のモードと発火に至るまでの潜時に着目して発火特性を数値的に解析した。その結果、膨張した細胞の発火タイミングが遅れ、逆に収縮した細胞の発火タイミングが早まる可能性があることを示唆した。またその原因は細胞膜容量の大きさに依存していることも明らかになった。この結果は、浸透圧差による短期的な細胞形状の変化が発火タイミング調節つまりは情報コーディングの一部を担っていることを示すものである。 最後にスパインの形状を観測結果にあわせて3種類に分類し、それぞれ刺激に対するスパイン内のカルシウム濃度と、長期増強を起こす化学物質であるCaMK II-CaMCa_4の濃度について時空間的な解析を行った。その結果、安定型スパインではCaMK II-CaMCa_4の濃度が他の形状のものに比べて非常に高くなること及びその減衰が数倍程度遅いことが明らかになった。この結果は、従来の生理実験結果とも整合がとれており、神経回路の適応的再編成機構の一端を明らかにするものである。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Sakatani S., Hirose A.: "The influence of neuron shape changes on the firing characteristics"Neurocomputing. 52-54. 355-362 (2003)
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[Publications] Sakatani S., Hirose A.: "Analysis of the influence of differences in somatic symmetry and sharpness on the firing rate"Neurocomputing. 印刷中. (2004)
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[Publications] 酒谷誠一, 廣瀬明: "神経細胞のイオン濃度と電位の時空間変化を表す理論"信学技報. 印刷中. (2004)
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[Publications] 加藤周一, 酒谷誠一, 廣瀬明: "スパインの形状がカルシウム/カルモジュリンプロテインキナーゼの濃度変化に与える影響"信学技報. 印刷中. (2004)