2003 Fiscal Year Annual Research Report
二座配位型ホウ素化合物によるルイス酸の新規活性化法とこれを利用する新反応の開発
Project/Area Number |
03J11185
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 輝伸 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トリアリールメチリウム / ジカチオン / X線結晶解析 / 電子酸化剤 / フルオロアルコール / ヒドリド捕捉剤 / ナフタレン / CV測定 |
Research Abstract |
二座配位型ホウ素化合物としてアリールビスボランを種々検討している中で、分子内の近傍に2つのトリナリールメチリウム部位を有するジカチオンの興味深い性質を見出し、その合成法の検討と構造・反応性を調べた。 トリアリールメチリウムは、3つのアリール基で安定化されたカルボカチオンであり、アルドール反応の活性化剤やヒドリド捕捉剤として用いられている。そこで、ジアリールメチル基2つをナフタレンの1,8位に配したジカチオン1を設計し、その合成を行った。まず1,8-ジアミノナフタレンを出発原料としてSandmeyer反応により対応するジブロモ体とし、そのジリチオ化を経て2倍モル量のジアリールケトンと反応させてジオール2へと導いた。さらに、これを酸により脱水することで結晶性の良いエーテル3へと誘導し、結晶化により精製した。ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)中、これに2倍モル量のTMSClO_4のトルエン溶液を作用させることでジシロキサンの脱離を行い、目的とするジカチオン1を合成した。ジオール2からではなくエーテル3を用いてジカチオン1を調製することにより、水の生成を抑え、またイオン化力の大きいHFIPを溶媒として用いることで生成物であるジカチオンを安定化し、アリール基上に電子供与基を持たないジカチオン1aでも効率良く合成することができた。さらに、1aの結晶化およびX線結晶解析に成功し、その構造を明らかにした。 アリール基上に電子供与基を持たないジカチオン1aのCV測定をしたところ、0.13Vに電子還元波が観測された。これは、1aに酸化力があることを示している。1aは、電子供与基による安定化を受けず反応性は非常に高く、電子還元によってカチオン炭素間に結合を生じ易いため、2電子酸化剤として働く。1aは、酸化剤の他にもヒドリド等の捕捉剤としての利用が期待される。
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