2003 Fiscal Year Annual Research Report
鉱物-水界面近傍における水の特性変化が物質移動と溶解に及ぼす影響
Project/Area Number |
03J11204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 正 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 流紋岩 / 水 / 電気二重層 / 遠心分離 |
Research Abstract |
近年,コンピュータシミュレーションや各種分光法による分析・解析から,固体の表面近傍の水は表面の影響を受けて通常の水と大きく異なる性質を持つことが指摘されており,「かたい水」などと呼ばれている.本研究では,岩石内部の間隙に存在するかたい水の量や表面からの厚さを調べ,かたい水が岩石内部での溶解・沈殿反応や物質移動の速度にどのような影響を及ぼしているのかを定量的に評価することを目的としている. 水の性質が変化する原因の一つとして,鉱物表面の電荷の存在が考えられる.珪酸塩鉱物が水溶液と接触すると,pHが中性付近では鉱物表面には一般に負電荷が発生する.これを電気的に中和するために,水中の陽イオンは表面近傍に集まり陰イオンは表面から遠ざかる.こうしてできる鉱物-水界面近傍のイオン分布は電気二重層と呼ばれている.多孔質な軽石質流紋岩の間隙水中の電気二重層の性質を調べるために,流紋岩を水溶液(Li^+,I^-=50μMを含む)中に浸して間隙を水で飽和させ,遠心分離により遠心力を段階的に上げながら間隙水を取り出して溶存イオン濃度の変化を調べた.その結果,I^-,Siの濃度は遠心力が上がるに連れて減少し,Na^+,Ca^<2+>,Li^+の濃度は逆に増加した.より高い遠心力で取り出される水は,より細い間隙にある水,もしくはより間隙表面に近い位置にある水と考えられる.すなわち,遠心力が上がるに連れてより表面の影響を強く受けた水が取り出されるため,表面電荷と異符号の陽イオン濃度が増加し,逆に陰イオン濃度は減少したと解釈できる.イオン濃度変化が顕著に見られたのは,取り出した間隙水の量が70%以上になったときであったことから,間隙水の約30%が表面の電荷の影響を強く受けていると考えられる.この結果を解析すると,電気二重層の厚さは表面から約100nmと推定される. この結果は,現在国際誌に投稿準備中である.
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