2003 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物クラスターの特長を生かした環境調和型の選択酸化反応系開発
Project/Area Number |
03J11217
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 善直 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ポリオキソメタレート / バナジウム / エポキシ化 / 過酸化水素 / アルコール |
Research Abstract |
昨年度までに発見したバナジウム2置換ポリオキソメタレート[γ-H_2SiV_2W_<10>O_<40>]^<4->を触媒に用いた過酸化水素を酸化剤としたアルケンのエポキシ化反応系について詳細を検討した。非共役ジエンを基質に用いると、過酸のような通常の酸化剤によるエポキシ化とは逆に、アルキル置換基が少なく反応性が低いかわりに立体障害が小さい二重結合が優先してエポキシ化された。代表的なジエンである(R)-(+)-リモネンを基質に用いた場合、反応性が低く立体障害が小さい8,9-位の二重結合のエポキシ化の位置選択性は68%に達し、これまで報告されている中で最も立体効果が大きな触媒であるポルフィリン系触媒(max.75%)に匹敵した。このことから、ポリオキソメタレート骨格中に活性点を構築することで、大きな立体効果を得ることが可能であることがわかった。また、X線単結晶構造解析により、触媒の活性点は2個のヒドロキシル基が2個のバナジウムを架橋したV-(μ-OH)_2-V構造であることを明らかにした。さらに、触媒活性点のヒドロキシル基が高い反応性を持ち、メタノール等のアルコールと速やかに反応してアルコキシドV-(μ-OH)(μ-OR)-Vを形成することをNMRと単結晶構造解析により明らかにした。このアルコキシド生成の平衡定数は、これまで報告されているバナジウムアルコキシドに比べはるかに大きい。過酸化水素に対しても触媒活性点のヒドロキシル基は反応し、ヒドロペルオキシドと推定される錯体V-(μ-OH)(μ-OOH)-Vが生成することをNMRにより明らかにした。これまで、バナジウムヒドロペルオキシド錯体はバナジウムを用いた均一系触媒の鍵中間体と推測されていたが未だ確かめられておらず、今後の反応機構の解明が期待される。
|