2004 Fiscal Year Annual Research Report
情報認識膜を用いた新陳代謝可能材料の設計と細胞脱着機構の解明
Project/Area Number |
03J11229
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡島 周平 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 情報認識膜 / 感温性ゲル / クラウンエーテル / 細胞 / 炎症 / 細胞活性 / グラフト鎖 / カリウムイオン |
Research Abstract |
細胞が発した分子シグナルを材料が認識し材料が細胞機能を自発的に制御する、生体システムに極めて近い新規な材料システムを開発した。死細胞のシグナル、カリウムイオンに応答して、その状態を劇的に変化させる情報認識膜上に細胞を培養した。情報認識膜とは、多孔基材の細孔表面に特定のイオンシグナルに応答し、表面を親水化・疎水化する分子認識ポリマーであるpoly-N-isopropylacrylamide-co-benzo-18-crown-6-acrylamide(NIPAM-co-BCAm)をグラフト重合法により固定化した構造を持つ膜である。この膜はカリウムイオンなどの特定シグナルを捕捉認識すると親水化する。一方、細胞は死滅すると恒常性が維持できなくなるために、細胞内部に高濃度で保持されていたカリウムイオンを流出する。細胞死が起きると人工膜界面が死細胞から流出したカリウムイオンを認識し、グラフト鎖が細胞の接着しにくい親水性となり、死細胞の脱着が起きる。実際に、紫外線で細胞死を誘導したところ、8割以上の死細胞が選択的に脱着した。また、シグナル応答膜が認識しない、リチウムイオンを高濃度に添加して細胞死を誘導したところ、同様に8割以上の死細胞が脱着し、細胞死の方法に依らず死細胞が脱着することを確認した。さらに、死細胞脱着後はカリウムイオンが拡散しグラフト鎖が元の収縮した状態に戻るため、周辺の生細胞が増殖することで元の状態に自己修復することが可能である。位相差顕微鏡で再生の様子を確認したところ、有意に再生が速まったことを確認した。さらに、このとき死細胞による炎症が拡大していないことを、IL-6を測定することにより確認を行い、細胞の活性が保たれていることをBrdUを用いることによって確認した。死細胞を選択的に脱着し、周辺細胞の活性を保つ本システムは、プライマリーカルチャーなどを培養困難な細胞培養法の確立に大きく貢献出来る可能性がある。また、バイオリアクターなどの長寿命化にも有効であると考えられ、新規なバイオマテリアルとして有用である。
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Research Products
(2 results)