2003 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスをプローブとした宿主細胞遺伝子の網羅的解析
Project/Area Number |
03J11255
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 寧子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インフルエンザウイルス / 遺伝子機能解析 / 遺伝子変異 / CHO細胞 |
Research Abstract |
感染症は人類の脅威であるが、ウイルス感染症に対する我々の武器はワクチンと抗ウイルス薬がわずかにあるばかりで、対処療法が主である。一方、DNA二重螺旋の発見に始まる遺伝子の時代は種々のゲノム・シークエンスの解読を完了し、そこから明らかとなった未知遺伝子の機能解析へと新たな段階を迎えている。それら未知遺伝子の中には抗ウイルス薬のターゲットが含まれる可能性もある。そこで、本研究はインフルエンザウイルスをプローブとしてウイルスの増殖に必要な宿主細胞の遺伝子産物を同定し、その機能を解析することを目的とする。 まず、染色体の多くを片方しか持たない株化細胞(CHO-K1細胞)に遺伝子変異剤であるICR191を50%致死量で5回処理し、これらの細胞の遺伝子に変異を導入した。次に得られた変異細胞集団にinfluenza A/Mallard/New York/76を接種し生き残った細胞をクローニングした。得られた細胞クローンは72種類あったが、いずれもウイルスレセプターのシアル酸の発現量が著しく減少していた。そこで、レセプター以外の新しい宿主細胞遺伝子産物を同定すべく、選択に用いるウイルスをVSVG(HA)GFP(NA) virus (Watanabe et al.,2003,J.Virol.77;10575-83)に変更し同様の過程を行い、97種の細胞クローンを得た。これらの細胞クローンは親株のCHO-K1細胞と比較して1/3から1/10,000程度にウイルス感受性が減少していた。このうち最も感受性が低くなったW57/1細胞について解析を進めている。これまでに、W57/1はレセプターであるシアル酸の発現量は親株と同程度であることがわかった。また、ウイルスの細胞への吸着・進入から核移行までは正常に行われているが、ウイルス蛋白質の合成は極度に減少していることがわかった。 今後、W57/1細胞にCHO細胞のcDNAライブラリーを導入し、欠損しているウイルス増殖に必要な宿主細胞因子を同定するとともに、その遺伝子産物と相互作用するウイルス因子を同定する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 前田寧子, 堀本泰介, 河岡義裕: "Classification and genome structure of influenza virus"Nippon Rinsho. 61・11. 1886-1891 (2003)
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[Publications] Maeda Y, Goto H, Horimoto T, Takada A, Kawaoka Y: "Biological Significance of the U Residue at the -3 Position of the mRNA Sequences of Influenza A Viral Segments PB1 and NA."Virus Research. in press.