2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11317
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白樫 正 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヒラメ / 単生類 / 感染動態 / 捕食 / 移入種 / 宿主行動 / ネオヘテロボツリウム症 |
Research Abstract |
本研究では海外からの移入種と考えられる単生類寄生虫、Neoheterobothrium hirameと近年日本沿岸で問題となっているヒラメ天然資源減少の関連性を室内実験および天然調査を通して検証している。実験では、ヒラメ稚魚減耗の主要因となり得る、捕食、疾病、飢餓に対するN.hirameの影響を調べ、本虫がヒラメ稚魚減耗の間接要因となり得るかを検証した。捕食実験では寄生を受けたヒラメ稚魚は、天然での捕食者であるヒラメ1-2才魚による捕食を、より受けやすいという結果が得られた。また、感染を受け、貧血症状を呈したヒラメは遊泳能力、特に持続遊泳時間が著しく劣る事も明らかになった。このことから、本虫がヒラメ稚魚の逃避行動、摂餌行動などに影響を与えることが示唆された。また、N.hirameと病原性の強いVHSウイルスの混合感染実験により、N.hirame感染魚はウイルス性出血性敗血症により罹りやすく、死亡率も高い事が分かった。さらに、実験感染魚を使った、感染魚と非感染魚間の摂餌行動、潜砂行動のビデオ撮影による検証も行ったが、全ての映像解析が終わっていないため、寄生による上記行動への影響は未だ明白でない。 天然調査では海域特性が異なる宮古湾、小浜湾において、ヒラメ当歳魚のN.hirameの感染動態を2002-2003年に月別のサンプリングによる調査を行った。その結果、本虫の寄生率、寄生強度はいずれの海域でも、夏低冬高の類似傾向がみられた。しかし、ヒラメ資源の減少が顕著な小浜湾では感染宿主あたりの虫数が宮古湾よりも数倍高い事が分かり、虫数と資源減少の関連性が示唆された。また、寄生虫の発育ステージを分類、経時的に調べることにより、宮古湾における感染サイクルの詳細が明らかになった。 以上の結果から、本虫が天然海域において、ヒラメ稚魚の減耗に関与している事が示唆され、水産資源における、寄生虫の重要性が再認識されたと考える。
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