2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J11317
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白樫 正 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ネオヘテロボツリウム / Neoheterobothrium hirame / ヒラメ / 移入寄生虫 / 行動 / 捕食 / VHSV / 単生類 |
Research Abstract |
ヒラメの寄生虫Neoheterobothrium hirameが天然ヒラメ稚魚の生存に及ぼす影響を調べるため、実験的に感染させたヒラメ稚魚の行動、捕食率、飢餓耐性、ウイルス病(VHSV)に対する感受性等を調べた。 行動実験では感染ヒラメ稚魚で潜砂、遊泳能力の著しい低下がみられ、その活動パターン、摂餌行動が非感染対象区と異なることが分かった。また、捕食実験において、感染ヒラメ稚魚、非感染ヒラメ稚魚、そして捕食者となる大型ヒラメを96時間同居飼育した結果、感染ヒラメ稚魚はより捕食を受けやすいことが明らかになった。さらに、ヒラメ稚魚に寄生虫N.hirameとウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)による混合感染実験を行った結果、両者の病原体に感染した魚ではいずれかの病原体に単独感染した魚より著しく高い死亡がみられ、N.hirameによってヒラメのウイルス病に対する感受性が増すことが考えられた。 さらに、2年間におよぶフィールド調査により、ヒラメ漁獲の現象が顕著な海域では感染ヒラメ1尾あたりのN.hirame虫数(寄生虫)が漁獲の安定している海域より著しく多いことが明らかになり、N.hirameとヒラメ資源減少の因果関係が示唆された。このフィールド調査の結果を基に行った実験では、10℃以下の低水温下ではN.hirameの感染力や発育が著しく低下することが分かり、海域間で見られたN.hirame寄生数の差はそれぞれの海域の温度差によるものであると考えられた。 これらの研究で、近年日本沿岸で深刻な問題となっているヒラメ資源の減少に対する新種の移入寄生虫、N.hirameの関与を支持する重要な知見が得られた。
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Research Products
(1 results)